マイナンバー情報総点検本部で発言する岸田文雄首相。左は河野太郎デジタル相
マイナンバー情報総点検本部で発言する岸田文雄首相。左は河野太郎デジタル相

 などと考えていると、そこにある疑念が生じてくる。

 河野氏は、岸田首相から見ると、来秋の総裁選における最大のライバルだ。マイナンバーカードの問題が生じたとき、いくつかの選択肢があったが、岸田首相はしばらく放置した。問題が拡大すれば政府批判につながることは承知の上で、批判の大部分を河野氏に押し付け、自分のマイナスよりも河野氏のマイナスが大きければ自分にはプラスだという判断をしたのだ。

 この戦略が非常にわかりやすく出たのが、前述の総点検本部の設置である。問題児河野氏が起こした大火災の火消し役を演じた岸田首相だが、よく見ると非常におかしなことに気付く。

 今回の問題で河野氏とデジタル庁の能力に疑問符がついた。そこで岸田首相登場となったのだから、総点検本部のトップは、問題を犯した河野氏の上に立つ人物でなければならないはずだ。それは内閣官房長官または首相しかいない。ところが、実際には、この本部のトップに河野氏を起用したのだ。自分自身に処分が必要とまで言った戦犯に問題の処理を任せるなど常識的には考えられない。どうしてそんなことをしたのか。

 そこには、総点検すれば、問題はさらに拡大するのは必至だという岸田氏の冷静な読みがある。マイナンバーカードの問題は、使ってみて初めてわかる。マイナポータルで確認するという人は非常に稀で、使っていない人はほとんど気付かぬまま問題が放置されているのだ。したがって、今回全ての紐付けに間違いがないか、カードを使っていない人を含めて総点検すれば、これまでの何倍、いや何十倍も不具合が出てくるだろう。それが数字で示されれば、大変なインパクトになる。「隠された問題案件がこんなにあったのか!」という驚きが広がり、批判はさらに高まる。

 結果は今秋までに出すことになっているが、夏とみられる内閣改造で河野氏をどう処遇するかは岸田首相にとって頭の痛い問題だ。安易に河野氏を切り捨てれば、岸田首相への批判となって跳ね返るリスクがある。それでも切った方が得だと考えれば、総点検の結果が出る前に、途中経過を報告させて問題をわざとプレイアップ(大きく扱うこと)し、こんなに酷いことになっていたのなら更迭やむなしという世論づくりをして改造時に切るという選択をするのかもしれない。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
河野氏がここから逆転する方法