どこまでいっても「わかる時もあれば、わからない時もあるの繰り返し」であり、「火風水土」はあくまでも最も妥当性の高いフィルターでしかなく、絶対のものさしではないのです。
そう捉えておかないと、「俺はお前のことはもう全てわかっている」といった傲慢(ごうまん)な姿勢に陥ってしまい、結果的には「人を観る目」を曇らせてしまう……。
大切なことなので、もう一度明記します。
くれぐれも、洞察が正しいかどうかという「結果」にはフォーカスしないでください。大切なのは、「過程・プロセス」です。
「この部下は、今何を感じ、考えているのだろうか」と相手に興味関心を抱き、自分なりに懸命に理解・共感しようとする。「火風水土」のどれだろうかと、あれやこれやと考えてみる。
その過程で、あなたは部下の言動にかつてなく興味関心を寄せることができるわけですが、それでもう十分に目的は達成しているのです。
この時点ですでに、部下はあなたの言葉に耳を傾けてくれるようになります。それだけの信頼関係・人間関係を構築できれば、部下とのコミュニケーションに関する悩みの大部分は、自ずと解消していくはずです。
以上を通じて一番受け取ってほしかったことを、最後に言語化しておきます。
あなたは部下に、「この人は、自分のことを懸命にわかろうとしてくれている」と思われているか。その結果、部下から信頼を得られているか。
この問いにイエスと答えられるようになるべく、これから日々のマネジメント業務に今回の「紙1枚」を役立てていってください。
一生ものの読書体験・学習機会として楽しんでもらえたのであれば本望です。
●浅田すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス株式会社代表取締役。「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。作家・社会人教育のプロフェッショナル。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車(株)入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、(株)グロービスへの転職を経て、2012年に独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。著書に『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)、『早く読めて、忘れない、思考力が深まる 「紙1枚! 」読書法』(SBクリエイティブ) などがある。