人生100年時代、自立した生活を長く送るためには、要介護状態になるのを避ける、できるだけ遅らせることが大切です。そのひとつのカギは、立ち上がる時や転倒の防止に必要な「筋力」の保持にあります。本連載では、年齢を重ねた親と子が一緒に考え、取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。3回目のテーマは、「体力」です。シニアに求められる体力とはどういったものでしょうか。そして今の体力はどれくらいあるか、確認してみましょう。
【イラスト】肩の柔軟性体力を測定するバックスクラッチテストはこちら
* * *
みなさんはこの頃、「すぐに体が疲れる」「途中で休まないと階段を上れない」「ペットボトルのふたが開けられない」など、日常の暮らしの中で体力の衰えを感じて不安になることが増えていませんか。年齢を重ねるごとに、例外なく誰もが老化の階段を下っています。そして、その衰えのスピードは、何も対策をしないと早まっていく可能性があります。
そこで今回は、あらためて「体力」について考えてみましょう。ここでいう「体力」とは、「身体(日常生活)活動の基礎となる身体的能力」。すなわち、からだが働くために必要な力です。
■体力には、大きく三つの要素がある
体力には大きく分けると「行動を起こす」「行動を持続する」「行動をコントロールする」という三つの要素があります。細かく分類すると次のようにまとめられます。
【A】行動を起こす
筋力:からだを自由自在に動かす筋肉の力
瞬発力:からだを瞬間的に動かすために発揮する力
【B】行動を持続する
筋持久力:繰り返し(持続)の運動に耐えられる筋肉の力
呼吸循環の持久力:肺や心臓と血液循環の機能により、筋肉に酸素を運び続ける能力
【C】行動をコントロールする
調整力:
・状況に応じてからだのバランスを取る能力(平衡性)
・状況に応じて正しい動作を巧みに行う能力(巧緻性)
・状況に応じて素早い動作を行う能力(敏捷性)
・からだの柔らかさを発揮する能力(柔軟性)
若いころは運動やスポーツをする機会が多く、パワー(筋力)やスピード(敏捷性)、バランス力(平衡性)など「技能に関わる体力」が注目されるでしょう。中高年になると、生活習慣病などの病気にかからずに健康でいることが大切であり、「健康に関わる体力」が重要視されるようになります。これは、体脂肪などの体組成、筋力、心肺持久力、柔軟性などから評価される体力です。
そして高齢になると、歩行、階段昇降、自転車・車の運転、ごみの持ち運び、衣類の着脱、入浴など、日常生活を円滑に過ごすために不可欠な「生活に関わる体力」の重要度が増していきます。そこでは、筋力に加えて平衡性、敏捷性、柔軟性、およびからだを巧みに細やかに動かす能力(巧緻性)といった総合的な調整力が問われるようになります。