ラーメンといえば、外国人レスラーも好きで、特にロード・ウォリアーズの2人も好んで食べていたね。彼らのすごいところは、試合前の練習後にラーメンを食べて、それから試合に望むところだ。俺でも試合前はラーメンなんか食えないよ。それでも彼らはしっかり食べて、試合をこなせるんだからすごいよね。まあ、たしかに試合時間は短かったけど(笑)。
プロレスラーはやっぱりステーキが好きで、スタン・ハンセンは東京に来ると、決まって「ステーキハウス リベラ」に行っていたね。あそこはレスラーが来るとずいぶん安くしてくれるから、なるべく日本では金を使いたくないレスラーたちに人気だったよ。
その代わり、写真を撮ったり、サインをしたりして、それを店に飾って、それで店もファンの間ではずいぶん有名になったね。レスラーはケチだから、お座敷にかかってご馳走になるか、ブルーザー・ブロディは居酒屋チェーンの「村さ来」が「安くて量が多くて最高だ!」って、お気に入りだったしね。
逆に俺がアメリカにいたときは、ケンタッキーフライドチキンとマクドナルドばっかりだったから同じようなもんだ。アメリカは移動が多いから、車を運転しながら食べられるものが多くなるんだよ。腹が一杯になればなんでもOKという感じだったね。飽きるとかじゃなくて、それを食わなかったら、ほかに食べるものがなかったし、今でもたまに食べたくなって食べることもあるし、嫌いにはならなかったよ。
俺が結婚した後は、鶏の唐揚げが勝負メシになったね。女房が一度に鶏肉2キロも揚げてくれて、それ以外にも計7品のおかずを作ってくれたんだから大したもんだよ。娘が生まれたばかりのときは、娘を抱いて両手に大量の食材を抱えて、当時自宅があった西麻布の坂道を登って、本当に大変だったろうね。
それから、年を重ねると、しゃぶしゃぶをよく食べるようになった。いつも「肉の万世」でしゃぶしゃぶ用の肉を買って来てね。しゃぶしゃぶはいい肉でやらないと、固くて食べられたもんじゃないから、うちでも豪華な食べ物だったね。万世の肉は、うん、まあまあ悪い肉じゃなかったね(笑)。
今は食事の量も少なくなって、かわいいもんだよ。娘の方がよく食べるくらいだ。ただ、今は入院中で、魚ばっかり食わされているから、さすがに肉が食べたくなるよ。よし、退院したらしゃぶしゃぶだ! 家よりも先に「肉の万世」に立ち寄って、肉を買ってから帰るぞ!
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。