Billboard Live TOKYO
でのライブ直前にインタビューに応じてくれたロバート・グラスパー(撮影/今村拓馬)
Billboard Live TOKYO でのライブ直前にインタビューに応じてくれたロバート・グラスパー(撮影/今村拓馬)

■音楽シーンを席巻した『ブラック・レディオ』

 00年代前半からジャズミュージシャンとして音楽活動をスタートさせたロバート・グラスパー。彼の名が世界中に届いたきっかけは、「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」名義で2012年に発表した『ブラック・レディオ』だった。ジャズ、R&B、ヒップホップなどを自在に取り入れた音楽性は当時の音楽シーンに衝撃を与え、史上初めて4つのジャンルのチャート(ヒップホップR&B、アーバン・コンテンポラリー、ジャズ、コンテンポラリー・ジャズ)で同時にトップ10入りしたアルバムとなった。

「『ブラック・レディオ』は当時の音楽業界にとても大きなインパクトを与えたし、本当に多くの人たちをインスパイアした作品だと自負しています。今となってはクラシック・アルバムですが、自分でも誇りを覚えますね。あのレコードによってジャズはいろんなジャンルと融合できることを証明できたと思うし、いろんなタイプのミュージシャンとコラボすることが増えた。自分の活動が広がったんですよね」

『ブラック・レディオ』以降、ジャズの姿は大きく変わった。アメリカ、ヨーロッパ、そしてここ日本でもジャンルの交流が進み、優れた作品が次々と発表されたのだ。ロバートは長い間止まっていたジャズの時計を再び動かしたと言っていいだろう。

「音楽は同じ場所に留まっているのではなく、動き続けるべき、進化するべきだと思っています。それを私に教えてくれたのは、トランペット奏者のロイ・ハーグローヴ。ヒューストンの芸術系の高校に通っているとき、学校に教えてきてくれて、その後、ツアーにも帯同したんです。ジャズを進化させようとする彼にインスパイアされて、“次は自分がその役割を担わなくてはいけない”と思うようになりました」

■目指すのはコミュニティを作ること

 ロバートは、数多くのミュージシャンとの共演やコラボを繰り返していることでも知られる。最近ではカマシ・ワシントン(サックス)、テラス・マーティン(サックス/プロデューサー)――いずれも現代のジャズを象徴する存在だ――と“ディナー・パーティー”を結成。LAのフェス<コーチェラ2023>に続き、5月に埼玉県・秩父で行われたジャズフェスティバルにも出演を果たした。

「才能のあるミュージシャンと一緒に音楽を生み出すことは本当に刺激的だし、これからも続けたい。ただ、基本的には“自分が好きな音楽を作る”ということがいちばん大事だと思っています。自分のやり方で自分がいいと思う音楽をクリエイトし、みなさんがそれを気に入ってくれたらいいな、と。私の音楽を通して初めてジャズを知り、ジャズクラブに来てくれる人も多いですからね。ただ、それは自分のゴールではなくて。私が目指しているのは、いろいろな世代、いろいろなジャンルのミュージシャンが集まるコミュニティを作ることなんです。日本人のミュージシャン、BIG YUKIもその一人です」

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