関さんの所属する腎センターは日本では数少ない、小児から成人までを対象に腎移植のできる医療機関です。このため全国から移植を希望する患者が紹介されてきます。
「こうした人たちの相談を専門外来で受けていますが、患者さんの中には、腎移植を希望することを主治医に話したところ、『腎代替療法については、移植のできる医療機関で詳しい説明を聞いてください、といわれました』というケースが少なくありません。つまり、腎代替療法についてほとんど説明を受けずに来院されることが意外に多いのです」(関さん)
腎移植にはドナーから提供された腎臓を移植する方法で、亡くなった人から提供を受ける「献腎移植」と生きている人から片方の腎臓の提供を受ける「生体腎移植」があります。
献腎移植は移植希望登録後、提供者があらわれるまで待機期間(約14年6カ月)は、血液透析や腹膜透析が必要です。
また、生体腎移植を希望した場合も、ドナーの健康状態によっては、移植が難しい場合もあります。さらに腎移植を受けた患者さんは、移植によって腎不全が治るわけではなく、生涯にわたって免疫抑制剤を服用したり、食事療法などの自己管理が必要です。こうしたこともよく考えた上で移植手術を決める必要があり、実施までには一定の時間を要します。
「このようなことから、腎代替療法の知識を深める必要性を感じたことが、腎代替療法専門指導士の資格を取ろうと思った大きなきっかけです」(同)
関さんがサポートした患者には、一度、腹膜透析をやろうと決めたけれど、考えた末に「自宅で透析をやるのは不安だから」と血液透析にした人、腎代替療法をしないという選択をつらぬき、寿命を全うした人など、さまざまなケースがあります。
「自分の腎臓が機能しなくなった後、どの治療にするかは、患者さんの人生にかかわる大きな選択だと思います。だからこそ、後から『ほかの治療もあるとは知らなかった』ということにはなってほしくありません。すべての患者さんに正しく腎代替療法について理解していただき、納得した上で治療に取り組んでほしいです」(同)