なお、腎代替療法専門指導士の資格をとれるのはいずれかの学会に所属している医師や看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床工学技士、レシピエント移植コーディネーターです。 20 単位(1 単位:50 分)の e-ラーニング受講を受けた後、e-ラーニングによる試験に合格することにより、資格を得られます。

 23年4月現在、1440人の腎代替療法専門指導士が誕生しています。

 東京女子医科大学病院血液浄化療法科特任教授で日本腎代替療法医療専門職推進協会常任理事の土谷健医師は資格制度を作った背景について、次のように話します。

東京女子医科大学病院血液浄化療法科特任教授で日本腎代替療法医療専門職推進協会常任理事の土谷健医師
東京女子医科大学病院血液浄化療法科特任教授で日本腎代替療法医療専門職推進協会常任理事の土谷健医師

「複数の腎代替療法があるにもかかわらず、日本でおこなわれているのはそのほとんどが血液透析です。近年はやや、減ってきたとはいえ、21年の統計では94.1%を占めており、これは世界的に見ても、特殊です。原因の一端は医療者にあり、血液透析以外にも等しく同じ効果がある治療の選択肢がきちんと患者に伝えられてこなかったことです。こうした問題を是正するために、腎代替療法について専門知識を持つスタッフが必要だという意見が以前から出ていたのです」

 腎代替療法の中でも、血液透析は最も医療コストが高い治療です。厚生労働省の調査では、人工透析の1人あたりの月額医療費は約40万円、年間総額は約1.57兆円と推計されていて、そのほとんどは公費による負担です。

 腹膜透析も月額医療費は大きく変わらないものの、自宅でできるので人件費がかからず、電気や水道代も血液透析に比べ安価なので、コストはかなり安くなるといわれています。

 腎代替療法専門指導士がほかにも効果的な治療があることを伝えることで腹膜透析や生体腎移植を中心とした腎移植を選ぶ人が増えてくれば、医療経済的にも大きなメリットです。

 また、コロナ禍では血液透析をおこなうクリニックや病院でクラスターが発生し、その結果、コロナに感染した透析患者を受け入れる病床の確保が大変だったことなど、新たな課題も露呈しました。血液透析の医療機関や送迎における密な環境が一因です。

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