大谷は2017年オフにポスティングシステムでエンゼルスに入団。会見では「エンゼルスと縁みたいなものがあると感じた」と語っていた
大谷は2017年オフにポスティングシステムでエンゼルスに入団。会見では「エンゼルスと縁みたいなものがあると感じた」と語っていた

 17年12月に、本拠地・エンゼルスタジアムでファン公開の入団記者会見を行った際、エンゼルス入りを決断した理由を聞かれてこう語っている。

「本当にたくさんのチームの方とお話しさせていただく機会をいただいて感謝しています。エンゼルスだけではなく全球団に感謝してその中で、ミーティングでエンゼルスと縁みたいなものがあると感じたので、本当にいいチームだと思ったのでお世話になろうと決めました」

■優勝争いできるチーム

 日本人選手になじみの深い球団でプレーがしたいという感覚より、温暖な気候で投打の二刀流でプレーできる条件が整っているエンゼルスを選んだ決断は大谷の性格を考えると、意外ではなく必然の選択に思える。当時は指名打者制度ではなかったドジャースに入団していたら、投打でフル回転は考えづらかった。先発陣は中4日の登板間隔だったため、大谷は外野手で出場して救援で登板する起用法になっていただろう。

 実際に、エンゼルス入団後に不可能と言われる「投打の二刀流」でメジャーを代表するスーパースターになった。在籍6年目を迎え、チームの中でもリーダー格に。メジャーを代表する強打者のマイク・トラウト、WBC準決勝で侍ジャパンを苦しめたメキシコ代表左腕のパトリック・サンドバル、エンゼルスで同期入団のテイラー・ウォードら気心知れた仲間がいて、ローガン・オホッピー、ミッキー・モニアック、ザック・ネトら将来を嘱望される若手の逸材も頭角を現してきている。フィル・ネビン監督との関係も良好だ。ただ、大谷が入団以降もエンゼルスは低迷したままで、一度もプレーオフに進出できていない。優勝争いに身を置く環境でプレーしたいという思いは、野球人として当然持っているだろう。

 エンゼルスは昨年のシーズン途中に球団売却騒動で揺れたが、今年1月にアート・モレノオーナーが23年以降も所有権を継続することを発表した。長年低迷している中で、優勝できるチーム作りのプランを示せるか。大谷の今オフの決断に大きな影響を及ぼすことは間違いない。(ライター・今川秀悟)

AERA 2023年6月19日号より抜粋