あまちゃんファンによって実現した、ラッピング列車「三陸元気!GoGo号」。来年4月上旬まで、三陸鉄道を走る(写真:三陸鉄道提供)
あまちゃんファンによって実現した、ラッピング列車「三陸元気!GoGo号」。来年4月上旬まで、三陸鉄道を走る(写真:三陸鉄道提供)

 それにしても、10年経っても色褪せない「あまちゃん」の魅力とは何か。

 理由は一つではないが、NHKメディア戦略本部でドラマジャンル編集長の下要(しもかなめ)さんは、「元気をもらえるのが一番大きいのでは」と語る。

「頑張れば報われる、明日に向かって進もうというのがあまちゃんのテーマだと思います。もちろん、アキは、悩んだり壁にぶつかったりします。けれど、常に前を向いて乗り越えていく。その姿が、閉塞感があり困難な今の時代を生きる私たちに、元気を与えてくれるのではないでしょうか」

■圧倒的な総合力

 フリーライターで『みんなの朝ドラ』の著書もある木俣冬(きまたふゆ)さんは、10年経って「あまちゃん」の再放送を見て、改めて感じたのは「圧倒的な総合力」だと言う。

「脚本、演出、ヒロイン、バイプレーヤー(脇役)たち、音楽、風景……等々、すべてに力があって、元気をもらえます」

 さらに結束力を感じるが、そのモチベーションの第一は、東北を応援したいという気持ちではないかという。あまちゃんは東日本大震災から2年後にできたドラマで、東北へのリスペクトがあり、といってひたすら持ち上げたり気を使いすぎたりするのではなく、あえて田舎の欠点も描いている。宮城県出身の宮藤官九郎さんが脚本だったからか、それにも説得力があったという。

 中でも、ひと際光るのは、夏、春子、アキの家族3代だと木俣さん。

「とりわけ、アキは透明感があって清純そうな面もありつつ時には毒づくこともあって、多彩な面があって目が離せません。朝ドラのヒロインはそれまで、たいてい清純一点張りでしたが、アキは表情がとても豊かです」

 そしてこう続ける。

「なつかしい1980年代カルチャーも満載。テレビ、演劇、音楽、すべてにおいて日本がやたらと元気で明るく、表現に忖度がなかった頃のパワーが凝縮していたと、10年経って、尊く思います」

久慈市宇部町の小袖海岸に立つ「じぇじぇじぇ」の発祥地を示す石碑。近くには、観光施設「小袖海女センター」もある(写真:久慈市観光物産協会提供)
久慈市宇部町の小袖海岸に立つ「じぇじぇじぇ」の発祥地を示す石碑。近くには、観光施設「小袖海女センター」もある(写真:久慈市観光物産協会提供)

■前に進む勇気

 再びの「あまちゃんフィーバー」を象徴するかのように、岩手県沿岸を走る三陸鉄道(三鉄)に、あまちゃんをイメージしたラッピング列車も登場した。車体全面にあまちゃんの名場面や、のんさんにちなんだイラストといった、いわゆる「あま絵」が描かれた「三陸元気!GoGo号」だ。

 三鉄は、ドラマでは「北三陸鉄道」と名前を変え登場する。ラッピング列車は、三鉄を応援するあまちゃんファンがクラウドファンディング(CF)で全国から資金を募り、目標額を上回る約791万円を集め、三鉄の協力を得て実現した。

次のページ