AERA 2023年6月5日号
AERA 2023年6月5日号

 なお、ここで比較した「合格者数」は、のべ合格者数だ。既卒生を含み、私立大の場合は優秀な生徒が複数の学部や学科に合格する場合がある。また、卒業生数が多ければ合格者数も多く出る可能性がある。それらを踏まえた上で、じっくり読み解いてほしい。

 93年春に大学受験をした人は、現在48歳を過ぎた辺り。生まれたときは第2次ベビーブーム下で、各校の卒業生数を見てもわかるとおり、30年前と現在とでは生徒数の差が際立つ。

 上位校が入れ替わった東日本に対し、大阪大や関関同立などは公立の強さが見て取れる。

「そんな中で、やはり東大の変化に注目です」

 そう指摘するのは、大学通信情報調査部の井沢秀さんだ。今も昔も合格者数では開成がトップに位置するのは変わらないが、ラ・サールや東京学芸大学附属、桐蔭学園、巣鴨、県立千葉がトップ10から姿を消している。井沢さんは続ける。

「ラ・サールや巣鴨は医学部志向が高まり、東大へ進む生徒が減ったことが背景にあります」

AERA 2023年6月5日号
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 一方、新たな顔ぶれとして先の渋幕のほか、聖光学院や西大和学園、日比谷などが並ぶ。

「ガリガリ勉強させるより、情操教育に力を入れているところが伸びています」(井沢さん)

集大成はペットボトル

 事実、大躍進を遂げた渋幕の田村聡明校長は、「楽しくなければ学校じゃない」と言い切る。

 同校には特進コースのようなクラス編成はなく、東大志望生もそうでない生徒も同じ教室で学ぶ。多様な将来を描くクラスメートと過ごすことで、生徒たちは視野を広げていく。

「だから、自発的に動く生徒が多いんですよ」(田村校長)

渋谷教育学園幕張(撮影/写真映像部・上田泰世)
渋谷教育学園幕張(撮影/写真映像部・上田泰世)

 推薦入試で東大に進学した生徒は、時間さえあればグラウンドでペットボトルロケットを飛ばしていた。どうすれば遠くまで飛ぶのか試行錯誤を続けた。

「卒業するときには『私の集大成を置いていきます』とボロボロになったペットボトルを置いていきました。見た人は『なんじゃこりゃ』と思うような作品ですけどね」(同)

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