「昔は大変だったんだよ……」。若者を諭すときに大人が使う、魔法の言葉。はたして受験の世界は、かつて“大変”だったのか。AERAは今年で創刊35周年。この間に「合格マップ」は、変わった。30年前の1993年と今年で合格者数を比較すると「強い高校」が見えてくる。AERA 2023年6月5日号の特集「変わる大学・高校」から記事を紹介する。
【激変21大学ランキング】旧帝、早慶、GMARCH、関関同立…30年で伸びた高校・消えた高校
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夢の国ディズニーランドの近くには、受験界の“王国”があった。
県立千葉、県立東葛飾、県立船橋。「千葉御三家」とも呼ばれる同県屈指の公立高校で、東京大を筆頭に難関大学へ多くの合格者を送り出してきた。そんな“公立王国”千葉の勢力図を大きく書き換えたのが、渋谷教育学園幕張だった。
愛称は「渋幕」。私立の中高一貫校である同校は、1983年に開校。東京ディズニーランドと同い年だ。新設校でありながら、いまでは東大に74人が合格。さらに、早稲田大に226人、慶應義塾大に136人が合格している(2023年春)。
学内に入るや2フロアにわたる図書館が目に飛び込んでくる。6万5千冊を超える蔵書のうち、1万冊以上は英語の本が占める。静謐な空間だが、「しゃべらない」などのルールはない。
「本を読む生徒もいれば、プロジェクターを映して議論する生徒もいる。ここでいろんな知を深めてほしいんです」
そう話すのは、同校進路部長の井上一紀教諭だ。今や押しも押されもせぬ進学校だが、開校してしばらくは、東大合格者数は数人ほどだった。それが02年には県内トップの県立千葉と合格者数が逆転。12年に東大合格者数トップ10に入って以来、東大の常連校になった。
大学受験の世界は目まぐるしく変化している。アエラでは、大学通信の協力を得て、難関大学への合格者数を調査。受験人口が多かった1993年と2023年を比較して「30年」の変化を追った。
ガリ勉よりも情操教育
東京・京都・大阪などの難関国立大と早稲田・慶應義塾・上智・東京理科・MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)・関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館)など人気21大学への合格者数の上位校をランキングにした。