AERA 2023年6月5日号より
AERA 2023年6月5日号より
AERA 2023年6月5日号より
AERA 2023年6月5日号より

 そう語るのは、近畿大学附属高校の乾武司教諭。iPadなどのICT機器を使った教育の先駆的な事例を作ってきた同校の教育改革推進室室長も務める。

「世間で騒がれるので、『何か学校にも影響を与えそうな厄介なもの』『生徒がズルをするためのチートツール』といった認識が蔓延している印象を受けます」

 乾さんはこう懸念を示す。

「学校での生成系AIへの対応は“積極利用”か“完全禁止”に二極化しそうな雰囲気です。この選択により生徒の学びに大きな差がつく可能性があります」

 今の子どもたちが巣立つ先は「AI前提社会」。そんな時代に学生の頃からAIを道具としてうまく使いこなしているか、その機会に恵まれなかったかは確かに大きな差を生み出しそうだ。

 もっとも、これは日本だけの課題ではない。悩む教育現場に手を差し伸べるべく、ユネスコ(国連教育科学文化機関)では研究プロジェクトを立ち上げ、推奨事項や倫理原則、学生向けのガイドラインの作成を始めた。

 先日の主要国首脳会議(G7サミット)の教育相会合でも、「生成AIが教育に与える正と負の影響、これを見極めていくことが重要という方向で合意」(永岡桂子文部科学相)、夏前を目途に国内のガイドラインの策定と公表を行うことが発表された。

 ChatGPTを開発したOpenAI社ら民間企業とNPOによる動きもある。同社に加え、世界経済フォーラムやアマゾン、マイクロソフト、カーンアカデミー、欧米の教育関係NPOが参加する非営利団体「TeachAI」ができ、ガイドラインを策定するという。(ジャーナリスト・林信行)

AERA 2023年6月5日号より抜粋