うまくなり、レギュラーになるのは、そういう子が多い。本人が気付かないと勝ち残る選手にならないってことでしょう」
三浦は自分を含め高校時代のチームを「サボりの天才の集まり」だと笑う。20キロのランニングをヒッチハイクしてサボるような強者揃いだったが、3年春のセンバツ決勝で池田のエース・水野雄仁に2安打に抑えられて完封負けを喫すると、彼らは「後輩を連れて、どこかに行って練習してたみたい」。秘密の特訓の効果は絶大で、以後の打線は初回から大量点を取るようになり、「ピッチングが楽になった」という。自ら気付いてやった練習の効果の実例だ。
「子どもたちには、『俺もサボってきたからわかるんだよ』と言うんです。で、『8割でしか走ってないだろ? その8を、9にはできるだろ。それを9.1にはできるだろ……』とね」
大谷のように自然にストイックに努力できるならいいが、そんな人間はそういない。「俺もサボってきたから……」という三浦の言葉には、大谷に憧れる者へのヒントがいっぱい詰まっている。(ノンフィクションライター・渡辺勘郎)
※週刊朝日 2023年6月9日号