気がつけば支持率も回復し、余裕の表情を見せるようになった岸田文雄首相。脳裏には、安倍晋三元首相並みの長期政権構築がちらついているようだ。そのための最大の武器が、解散カード。広島サミットを終えた時、どんな決断をするのか──。
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5月9日、米誌「タイム」(5月22・29日号、電子版)の表紙を、得意げな笑みを浮かべた岸田文雄首相の顔写真が飾った。その横には「日本の選択」という見出しとともに、「岸田首相は数十年の平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国にしたいと望んでいる」と紹介した。
特集記事のタイトルは外務省が「表題と中身に乖離(かいり)がある」と指摘して後に変更されるという騒ぎがあったものの、世界的な雑誌の表紙に選ばれたこと自体には、「岸田首相は周囲のイメージと違って、欲深い人。まんざらでもないはずだ」(官邸幹部)との声もあがる。
周辺によると、岸田首相は「安倍さんはああだった」と言うのが口癖のようになっており、昨年7月の銃撃事件で亡くなった安倍晋三元首相の立場と自らを重ね合わせている節があるという。そこにはもちろん、安倍氏並みの本格長期政権を目指す意思も含まれているのだろう。ある政府関係者は語る。
「岸田首相は長期政権を見据え、いま主流派の岸田・麻生・茂木の3派体制から茂木派を切り、現在やや距離を置いている安倍派を迎え入れる新3派体制構築を狙っている。次の党幹部人事で安倍派の萩生田光一政調会長を幹事長に横滑りさせれば、永田町の政治的パワーバランスは変わる。多少支持率が下がっても政権運営に支障はなくなる」
こうした観測について、政治アナリストの伊藤惇夫氏も同調する。
「岸田首相が一番怖いのは政敵の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長ではなく、安倍派です。メンバーが百人に達した安倍派がどう動くかは、党内政局に非常に大きな影響を与える。そこは首相もわかっており、安倍派を敵にしない作戦を取っている。理念、哲学がなく融通無碍(むげ)なのが皮肉にも岸田首相の強みなんです」