今後、北大西洋条約機構(NATO)の主要国から戦車の提供を受けたウクライナ軍が反転攻勢を強め、現地での戦闘が激化すれば、ロシアによる核使用の危機がますます現実味を帯びてくる。

 実際に使われてしまったら第2次世界大戦後初の非常事態となるのはもちろんだが、その手前の一触即発の核危機という局面でも、「選挙で対応できませんでした」などと言ったら世界中の笑いものになる。しかも、今年はG7議長国だ。首相は周囲に「議長国の責任は重い」と、盛んに話しているという。

■総選挙遅らせる核と金融の危機

 さらに、国際金融への懸念も存在する。米国では過度のインフレが収まりつつあるものの、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが続く影響で銀行の破綻が相次いでいる。前述のように米政府はデフォルト回避に必要な連邦政府の債務上限引き上げ問題を抱えており、かつてのリーマンショックのような危機に転じる恐れがないとは言えない。

 ある閣僚経験者は「核と金融の二つの危機が顕在化してくると、総選挙は今年の夏以降になるだろう」と、予測する。

 過去にも似たような例はある。2016年4月の地震を受け、当時の安倍首相は狙っていた衆参同日選挙を断念。リーマンショックが起きた08年には、当時の麻生太郎首相が解散を見送った。

 一方で、官邸や岸田派の中では、そもそも早期解散は得策ではない、という意見もあるという。

「いま、首相の頭の中はサミットと人事だけ。来秋の党総裁選での勝利が最優先であり、そのためには衆院選勝利の余韻が残るよう、解散のタイミングはできるだけ総裁選に近づけたほうがいいということです」(前出の政府関係者)

 この意見に賛同しているのは麻生副総裁、森元首相、青木幹雄元参院議員会長ら重鎮組だ。

 当の首相は周囲に「(時機を逃して負けた)麻生副総裁と菅前首相の轍は絶対に踏みたくない」と、選挙の話題になると、ことあるごとに話しているという。

 政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう語る。

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