店長の関谷恵子さんは元々コーヒーが苦手だったが、「『ダークチョコみたいだよ』と勧められて水出しに挑戦してみたら、特有の後味がなく、最後まですっきり飲めたんです」(撮影/写真映像部・東川哲也)
店長の関谷恵子さんは元々コーヒーが苦手だったが、「『ダークチョコみたいだよ』と勧められて水出しに挑戦してみたら、特有の後味がなく、最後まですっきり飲めたんです」(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 カタそう、ムズカシそうと、敬遠する人もいる理系の世界。そんな取っつきにくさを取っぱらうべく奮闘する店がある。今回は、サイエンスの雰囲気を“形から”楽しむ方法を提案するカフェ「理科室蒸留所」をご紹介。

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 職人の新しい仕事を作りたい。理化学ガラス製品メーカーの関谷理化は新たな挑戦として、オリジナルの蒸留器や水出し装置を開発し、テイクアウトのドリンクスタンドを開いている。

「ブラック珈琲」や「珈琲牛乳」のほか、「ジンジャーソーダ」(右端)も人気。生姜の蒸留水を炭酸水で割ったもので、色も味もないのにパンチの利いた爽やかな香りが直撃する(撮影/写真映像部・東川哲也)
「ブラック珈琲」や「珈琲牛乳」のほか、「ジンジャーソーダ」(右端)も人気。生姜の蒸留水を炭酸水で割ったもので、色も味もないのにパンチの利いた爽やかな香りが直撃する(撮影/写真映像部・東川哲也)

 シャーレやビーカー、フラスコが所狭しと並ぶ店内は、怪しげな研究室……とは程遠い、おしゃれ空間。なかでも目を引くのが、実験用のスタンド(支柱)で組まれた、ツインタワーのような2台の「水出し珈琲(コーヒー)装置」だ。丸底フラスコに入れた水が、らせん状に曲げたガラス管を通り、シリンジ内のコーヒーに到達。1秒1滴のペースでゆっくり抽出する。加熱しないため、えぐみや苦みの少ない味わいが売り。驚くほどするりとのどを通り抜ける。

地元住民のほか、近隣の美術館や庭園を目当てにやってきた人も、ふらり。学生時代、理科室で手に取った器具との再会に、「懐かしいー!」という声がよくあがる(撮影/写真映像部・東川哲也)
地元住民のほか、近隣の美術館や庭園を目当てにやってきた人も、ふらり。学生時代、理科室で手に取った器具との再会に、「懐かしいー!」という声がよくあがる(撮影/写真映像部・東川哲也)

 スタイリッシュな装置に魅入られて、自宅でのDIYに挑む上級者も。店のはす向かいには、インテリア用品として楽しめる理化学器具を販売する姉妹店「リカシツ」があり、必要なパーツを調達したり、オーダーメイドで職人に作ってもらったりできる。

 大きさも形も様々な透明の理化学ガラスに、無限の可能性が映る。

理科室蒸留所/東京都江東区平野1-13-12

リカシツ/同1-9-7 フカダソウ102

(取材・文/本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2023年5月19日号