高橋:それがすごくうらやましい。日本では女性は集まることができるんです。でも、男性の話を聞くと悲惨ですよ。会社をリタイアすると世の中から切り離されたみたいになってしまう人が多い。会社に所属することはできたけど、それ以外の共同体に所属したことがほとんどないので、いきなり孤立してしまうんだよね。

ブレイディ:日本は家族になんでもさせようとしますよね。家族でなくてもいいんだ、外から助ける人が来てもいいんだ──そういうことが書きたくて昨年『両手にトカレフ』という小説を書いたんです。日本は自己責任論という言葉があるから、共助は何か悪いもののように言われますが、お互いに助け合いましょうという心情を持ってない人たちの国が民を助けるわけがない。相互扶助の文化がなければ、人々を助ける政府を選ぶわけがないんですから。

 家族以外の支援がないとやっていけない状態になっていくなかで、どこからともなく自然にそういう共助が立ち上がってくるのは、イギリスの底力だなと思うんです。でも、それはやはりパブなりボランティア活動の輪なり、血縁と職場以外の何かをイギリスの人は普通に持っていて、そこから立ち上がってくる部分が大きいと思います。

高橋:イギリスには国家でもなく家族でもない、個人を支える共同体があるということだよね。いまの家制度が壊れた時、1人でいいのか。そんな時に血縁ではなくても「家族」としか呼びようがないつながりがあればどうだろうか。家族だと父、母、子ども、それしかないけれど、血縁というつながり方ではない「家族」だったら、規模も関係もすごい数の組み合わせが考えられるでしょう。お父さんが3人とか、同性で養子をもらうとか。血縁でない人たちによって血縁よりもいい関係を作りだす、これも一つの希望ですよね。

(構成/編集部・三島恵美子)

※この対談は、朝日カルチャーセンター横浜教室で行われた講座を採録したものです。

AERA 2023年3月27日号より抜粋

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