9月24日の中日戦でも5回2死まで無安打無得点に抑え、シーズン2度目のノーヒットノーランが期待されたが、前原博之の右翼ポール際へのファウルにも見えた際どい打球がホームランと判定されたことにより、記録が途切れている。

 来日2試合目の登板で早くも快挙を成し遂げたのが、2000年に中日に入団したメルビン・バンチだ。

 前年はマリナーズで5試合登板も、シーズンのほとんどを3A・タコマで過ごした。当初の首脳陣の期待度は「中継ぎとしてやってくれれば」だったが、オープン戦で好投し、「先発でも十分やっていける」と評価も急上昇。さらに川上憲伸、落合英二の出遅れもあり、4月1日の開幕カード2戦目、ヤクルト戦で先発に抜擢された。

 この試合で8回2死までゼロに抑え、来日初勝利を挙げたバンチは、中5日で登板した4月7日の横浜戦で、一躍伝説の主人公となる。

 チーム打率3割超のマシンガン打線に対し、4回までに4四球と制球に苦しんだが、適度に荒れていたのが幸いし、1、3、4回のピンチを併殺などで切り抜けた。

 5回以降は付け入る隙を与えず、8対0で迎えた9回2死、3番・鈴木尚典に対し、外角低め一杯の速球をズバッと決める。上本孝一球審が「ストライク!」と右手を高く上げた瞬間、、史上68人目の快挙が達成された。

 これには星野仙一監督も「えらいことをやってくれた。あの打線が相手だけに大したものだ」とビックリ仰天。

「こんなのプロに入って初めてだよ。記念のボールは誰にもあげない。僕の宝物さ」と満面に笑みをたたえた右腕は、同年14勝8敗で最多勝にも輝いた。
 
 2000年はもう一人、近鉄の左腕、ナルシソ・エルビラも6月20日の西武戦でノーヒットノーランを達成している。

 こちらは競馬にたとえるなら10万馬券に相当し得る“大穴”的快挙だった。

 この日まで1勝4敗、防御率8.10の投手が、首位を走る西武を無安打無得点に封じようとは、誰が予想しただろうか?

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