そこで、恒常性維持機能と同じような仕組みが、肉体的にだけではなく、心理的にも自己同一性(アイデンティティ)として働いている。

 この点についても、感覚的にはすぐに納得できると思います。

 以上の説明を、端的にまとめて言語化してみましょう。

 私たちのベースは、カラダもココロも「現状維持」

 したがって、部下に「変われ!」と言っても「変わらない(=現状維持)」となるのは当然であり、だからこそ「部下は変えられる、ではなく変えられない、変わらないが自然なのだ」という前提から、全てのリスタートをはかっていきたいのです。

■「支配のマネジメント」から「支援のマネジメント」へ

 ここまで読んでみて、「いや、ドンドン成長している部下もいます!」「劇的に変わった人もいるんだけどな……」「自分自身も変化・成長し続けてきたからこそ、今マネジャーをやっているんだが」と感じた人もいると思います。

「部下は変えられないなんてことを前提にしたら、マネジメントなんて成立しないんじゃないか」と思った人もいるかもしれません。

 そこで、マネジメント分野において巨人と称されるドラッカーの言葉を、1つ挙げてみたいと思います。

『現代の経営[上](ドラッカー名著集2)』(ダイヤモンド社)という本から、次の言葉を引用させてください。

目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに代えることにある。

 今回この名言でフォーカスをあてたいのは、「支配」という言葉です。

 部下を自分の思い通りに「変えてやろう」ということを前提にしたマネジメントは、最終的には「支配」のマネジメントに行き着いてしまう。

 そうではなくて、部下自身の「自己管理」によるマネジメントをベースにする。

 要するに、こういうことです。

 部下は変えられません。

「現状維持」という人間の基本的な前提を無視して部下を無理やり変えようと働きかければ、それは「支配のマネジメント」になってしまいます。

 そこに、部下の自由や自主性・主体性はありません。

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部下が自ら変わるように仕向ける