「(G7首脳が)広島まで来てこれだけしか書けないかと思うと、胸がつぶれそうな思い。死者に対して侮辱。死者に対して大きな罪だった」

「今の核をめぐる現状を正直に私たちと分かち合う意図があるなら、核兵器禁止条約について言うべきだった」

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲・国際運営委員は最終日の21日、記者会見でこう述べた。「広島で開いたにもかかわらず、核軍縮の道を切り開けなかった残念なサミットと評価されると思う」

■ロシア排除の印象

 広島G7は、ウクライナ戦争が泥沼化する中で開かれた。今は第2次世界大戦時とは違い、大量の核兵器と原発があふれる時代だ。核使用の芽を摘むには、この戦争が核戦争に発展しないようにしなければならない。そのためには、一刻も早く戦闘停止に向けて動くことだ。

 広島・長崎で核兵器が使われたのは戦争の結果である。被爆地に立つなら、核の惨禍に触れるだけでなく、それをもたらしたのは戦争であるという認識を持つべきだ。しかし、果たしてそれはできただろうか。

 22日付朝日新聞の社説は「戦争終結への道筋など大局に立った議論が聞かれなかったのは理解に苦しむ」と書いた。まったく同感だ。議長を務めた岸田文雄首相は「国際社会を分断と対立ではなく、協調に導く」とうたいながら、成果文書から受ける印象はロシア排除でしかない。ロシアの暴挙を批判するのは当然のことだ。だが、戦争を止めるのも核軍縮を進めるのも、ロシアや中国との対話なくしてありえない。対話なしに、どうやって協調に導くのだろうか。

 戦争を避けるには、敵か味方かではなく、「安全保障のジレンマ」で戦争を誘引しないようにする戦略的な慎重さが必要になる。ウクライナ戦争はその教訓だ。岸田首相が「歴史的」と強調したG7広島が、後に今日を振り返った時、日本を戦争に巻き込む歴史的な日とならないことを願うばかりである。(朝日新聞編集委員兼広島総局員・副島英樹)

AERA 2023年6月5日号より抜粋