「子どもの頃、自宅には新聞が届いていたし、大学入試に役立つと言われて中学生の頃からよく読んでいた。今も面白いな、と思う連載や企画がたくさんある」
そう話すのは、都内の専門商社で働く男性(49)だ。毎朝、ベランダでタバコを吸いながら朝刊をチェックするのが日課という。だが、見ているのはスマホの画面。デジタル会員になっている新聞の画面表示を新聞の紙面そのままに設定し、タップしてページをめくる。
「紙で購読しようとは思いませんが、なんだかんだ言っても、新聞の体裁になじみがあるんです」(男性)
■誰もがマスメディア
テレビ東京で「家、ついて行ってイイですか?」などの人気番組を手がけた映像ディレクターの高橋弘樹さん(41)は、
「デジタル化が進んでいますが、コンテンツの質が高いのは、圧倒的に大手メディアです。記者やディレクターひとりひとりの能力が高い。きちんと教育されているから、原稿がうまくて構成力もある。粘り強い調査報道ができる体力もあるのも、大手メディアの良さ。使いにくいだけです」
と話す。
良質なコンテンツを生かす「使いやすさ」。それはNYTが成功している理由のひとつでもあるだろう。
高橋さんは今年2月、テレビ東京を退社し、YouTubeチャンネル「ReHacQ(リハック)」を立ち上げた。経済学者の成田悠輔氏と泉房穂・前明石市長の対談企画などが受けて、すでにチャンネル登録者数は32万人を突破している。
「誰もがマスメディアになれる時代。そこにチャレンジしていきたいし、手応えを感じている」(高橋さん)
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年5月29日号より抜粋