出版不況と言われて久しい。新聞や雑誌は刷り部数減が続いている。そんな紙媒体業界がデジタル展開に注力しているが、収益化に苦戦している。一方、収入を伸ばす海外メディアもある。何が違うのか。AERA 2023年5月29日号から。
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徳島県内の進学塾で働く女性(43)は、1999年春、京都市内の大学に進学し、一人暮らしを始めた。当時の仕送りは月10万円。そこからアパートの家賃5万2千円と光熱費を支払って、残りはどう使おうか、と考えていたら、両親がこう言ったという。
「新聞くらいは取りなさい」
女性は「それもそうだな」と素直に聞き入れ、実家で購読しているのと同じ全国紙の販売店に購読申し込みをした。
携帯電話は、高校時代は学校から持つことを禁じられていたので、初めて持つ二つ折りのガラケー。新聞代と携帯代を合わせたら計1万3千円ほどだったという記憶がある。それが毎月の支出に加わった。
■「高いな」と感じた
ファッションが好きだったので、毎月、“赤文字系”の雑誌を2冊購入して、学食で読んだ。女性は、
「いま振り返ると、すごいアナログ(笑)。でも、周囲の学生もみんな同じような感じでした」
と振り返る。
大学卒業後、地元に戻って就職し、実家から勤務先に通った。5年後の2008年に結婚した時も新居で新聞を購読。だが、子どもが生まれ、少し広い家に引っ越しをした15年からは、新聞を購読していない。携帯はいつの間にかスマホになり、雑誌も買わなくなった。女性は言う。
「新聞を購読しなくなった理由は『高いな』と感じてしまったから。それまでも取っていたのに、ある時、そこまでのお金を出す必要ないな、と思って。ニュースもファッションもスマホでチェックできるから」
新聞や雑誌といった紙媒体が売れなくなって久しい。日本新聞協会によると、新聞の総発行部数が過去最高の5376万部に達したのは97年。雑誌も同じく97年がピークで、総販売金額で1兆5644億円を記録している(出版科学研究所調べ)。10年ごろからスマホが普及して以降は、右肩下がりが続く。