実家の片付けの究極形ともいえる、実家じまい。「売る」にしても、「貸す」にしても、「壊す」にしても切り離せないのが片付けだ。プロが直面した実家じまい体験をもとに、ポイントをひもとく。
【画像】いざというときのために。貴重品・重要書類をリスト化した例がこちら
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「“実家じまい”したことで、やっと気持ちの区切りがつくようになりました」
5千件を超える片付け相談の実績を持ち、お片づけ習慣化コンサルタントとして、幅広い世代の「片づけの習慣化」をサポートしている西崎彩智さん(Homeport代表取締役)。コロナ禍に入る直前の2019年、住み慣れた“実家じまい”を行った当事者でもある。
きっかけは、入退院を繰り返していた父親が、心臓発作で突然倒れたことだった。
当時、西崎さんは福岡県で起業して間もないタイミング。西崎さんには姉が一人いるが、同じく実家のある岡山を離れ、大阪で家庭を持って暮らしている。姉妹ともに、他県でそれぞれの生活を築いており、この先、岡山に戻ることはないと決めていた。
そんな矢先、父親が突然倒れたことを聞き、岡山に駆けつけた西崎さんは、父親の病院の待合室で途方に暮れることになった。当時、実家には両親が暮らしており、母親は以前から認知症を患っていた。西崎さんも、母親が認知症であることはわかっていたのだが、その日初めて、母親が病院内のトイレに行って、待合室に帰ってくることができないという現実を目の当たりにした。そして父親が不在の実家で、母親を一人にすることはできないと悟ったのだった。
実家じまいに向けて本格的に動きだしたのは、入院中の父親が自宅に戻ることはないとわかったころ。姉妹ともに他県で生活していることもあり、両親が年を重ねていく中で「この先、実家をどうしようか」ということは、以前から家族内でもたびたび話題にしていたテーマだった。
「私たちは岡山に戻ることはもうない」「だから私たちのために、無理に何かを残そうとしなくていい」──。