冒頭の西崎さんも、父親が重要な書類関係をひとまとめにし、「大事な書類はここにある」と家族に伝えていたことが、実家じまいの際に大きく役に立った。
「重要なものがどこにあるのかわからないと、それを探すことから始めなければいけないので、本当に大変。親が実家にいるうちにまとめてくれていたのは、大助かりでした」(西崎さん)
貴重品や重要書類の片付けは、いざというときに家族がわかりやすいよう、リスト化しておくと良い。それぞれの実家なりのリストを書き出しておくと、災害時に慌てなくて済み、子ども世代ももしものときに困らない。
リストを書き出したら、置き場所を家族で共有しておく。昔から保管してあるものなどは、しまう場所を勘違いして覚えていることもあるので要注意。通帳や印鑑など比較的よく使うものはすぐ出てくるが、長いあいだ持っているだけの有価証券や不動産の権利書などは、記憶と違う場所にあることも少なくない。
■いざという時の準備もセットで
「騒動や勘違い、親族間の“あったはず”といういざこざを避けるためにも、しまう場所は最低限、親子で共有しておくことをお勧めします。しまう場所は防犯を考えて、泥棒が入ったとき、10分以上探しても見つからないところが望ましいでしょう」(渡部さん)
さらに、もしものときを考えるなら、【1】形見分けリストを作る、【2】棺に入れる“旅立ちセット”を作っておく、【3】遺影を選んでおくのも、生前のうちにできていると理想的だ。【1】があると、形見分けでトラブルになりがちな「誰が何をもらうか」を避けることもできる。
また形見を受け取る人に、形見分けするものがいるのかいらないのかを確認しておくことも大切だ。片づけヘルパーの永井美穂さんは言う。
「買ったときにどんなに高くても、その人にとってどんなに価値があっても、形見分けしてもらうほうにとっては、趣味嗜好が合わなければ不要なもの。いるかどうかの確認ができていれば、“お金になるなら今のうちに売って、おいしいものでも食べに行こう”という選択もできます。最近は生前に形見分けするケースも増えていますが、自分のいざというときを見据えて、少しずつ整理しておくのも良いでしょう」