しかし、「放送法の解釈変更に不当な介入があったかどうか」は本質ではない。「個別番組で判断するか」もポイントを外している。テレビ局はスルーしているが、実は、放送法4条違反は誰が判断するのか、そして、違反に対して政府が行政指導や停波などの措置を採って良いのかという根本問題があるのだ。
学界の通説は、4条は放送事業者が自らを律するための倫理規範であり、それに違反してもペナルティは課すことができないという解釈である。
テレビ局は、自分たちは政治的公平は守っていますとか、これまでの姿勢を貫きますとか抽象的なことでお茶を濁しているが、本来はっきりしなければならないのは、政府、与党など権力側からの圧力に対しても独立を守って報道することを宣言し、4条違反で制裁を課すという解釈なら、4条は憲法違反であり廃止すべきだということを声を大にして言うべきである。
そもそも放送法の目的は、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することに『よつて』、放送による表現の自由を確保すること」である(第1条)。不偏不党は手段であり、意味するのは政治介入の否定。目的はあくまで表現の自由の確保である。
不偏不党を守るために政府が報道の自由に介入するという本末転倒の誤った解釈を根本から改めること。それを国会の議論の中心にして欲しい。
※週刊朝日 2023年3月24日号