3月3日の参議院予算委員会で飛び出した高市早苗経済安全保障担当相の議員辞職発言が注目を集めている。
立憲民主党の小西洋之議員が提示した総務省の文書の中に2015年に当時の高市総務相・安倍晋三総理間の電話会談の記録があったが、高市氏は、その文書を捏造と断定。小西氏が、捏造でなければ閣僚、議員を辞職するかと聞くと、「結構だ」と応じてしまった。
7日に松本剛明総務相が一連の文書は、総務省の行政文書だと認めたため、野党側は高市氏辞任を求めて大騒ぎだ。
しかし、この発言のおかげで、本来議論の焦点である「テレビ報道の自由」についての本質論が霞んでいる。小西議員も、それを狙ったはずなのに、思わぬ高市発言でそちらの追及をせざるを得なくなってしまったようだ。
そこで本題だが、放送法第4条第1項という法律の条文がある。そこには、テレビ局などが心得るべき規範が書いてある。例えば、「政治的に公平であること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などだ。
以前政府は、この4条1項順守について、個々の番組ごとに判断するのではなく、放送局の番組全体を見て判断するという解釈を採っていた。しかし、15年の高市総務相の頃から、一つの番組だけでも4条1項違反と判断する場合があるという解釈に国会答弁などで勝手に変更し、16年にはそれを政府の文書として明示した。
当時、高市総務相は、その違反に対して、最終的には停波(放送を止めること)もあり得ると言って、テレビ局を脅した。
今問題となっているのは、その解釈変更が行われた際に、総理補佐官だった礒崎陽輔元参議院議員が、総務官僚らに密室で圧力をかけて不当な解釈変更が行われたということだ。「ただじゃすまないぞ」「首が飛ぶぞ」などのパワハラ発言をした疑いも出て、ワイドショーでは話が盛り上がった。