東京ドームは、株式会社東京ドームが所有しており、年間30億円前後といわれるレンタル料を払っていた巨人は、築地を自前の新本拠地にすれば、老朽化やレンタル料などの問題を一挙に解消できる。さらに将来、OBの松井秀喜氏を監督に招聘することも視野に入れ、松井氏が望む天然芝の球場にする予定だったといわれる。

 ところが、16年の夏季五輪開催地を選ぶ09年のIOC総会で、東京は落選してしまう。巻き返しを図った東京は20年の五輪誘致に成功するが、この4年のずれと豊洲移転が遅れたことが、新球場構想にも大きな影響を及ぼす。

 そして、16年に就任した小池百合子都知事が築地を「食のテーマパーク機能を持つ一大拠点として再開発する」方針を掲げたことで、跡地問題は振り出しに戻った。

 その後、代々木公園再開発予定地も条件が合わず、最終的に移転を断念した巨人は昨オフ、約100億円かけて東京ドームを大改修し、引き続き本拠地として使用することになった。

 もし16年に東京五輪が開催されていれば、コロナ禍による延期もなく、築地新球場も幻と消えることはなかったかもしれない。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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