「学生時代の夏休みというと、旅行に行ったり、友だちと遊んだりをイメージしますが、クラシック音楽を学ぶ若手にとって夏休みは大事な繁忙期です。日本でもロックフェスが夏に開かれるのと同じように、スイスの避暑地やアメリカの田舎など、別荘地のような自然豊かな場所でさまざまな音楽祭が開催されます。そうした音楽祭には有名な演奏家や先生方がバカンスを兼ねてレッスンのために長期滞在しますし、クラシック業界関係者も集まるので若手にとってはネットワークを作る大きなチャンス。滞在中に自分の学校以外の先生と知り合えたり、レジェンドといわれる演奏家に習える可能性があります。演奏が認められれば、別のコンサートに声をかけてもらえるかもしれません。ただ、大きなチャンスがある一方で、毎日試験官に囲まれて演奏しているようなものなので、全然気持ちが休まらないですよね(笑)
私は大分で自分のサマープログラムを運営していたため長期での参加はできませんでしたが、オーストリアのザルツブルク音楽祭、イリノイ州で開かれるラヴィニア音楽祭、マサチューセッツ州のタングルウッド音楽祭、バーモント州で行われるストウ・タンゴ音楽祭や、カルテットのコンサートツアーなどに参加していました。なかでもタンゴ音楽祭は、今もよく一緒に演奏しているタンゴ音楽仲間と出会った場でもあり、大好きな音楽祭のひとつです。今年の夏も参加する予定です」
■修了式で思いがけない発表
ジュリアードで充実した2年間を過ごした廣津留さん。大学院の修了にはリサイタルが必須だったという。
「ジュリアードの修了にあたっては、論文がない代わりにリサイタルを行います。学生といってもみんな非常にハイレベルな演奏をするので、教授や学生だけでなく地元の音楽好きの人たちも聴きに来ます。
この卒業リサイタルでは、ステージで演奏するだけでなく、選曲した理由などを観客の前でプレゼンテーションをすることが必須です。私は曲の成り立ちに面白いストーリーがある曲ばかりを演奏するプログラムを組んで、曲が生まれた背景などを説明してから演奏しました」