ジュリアードの修了式を終えて(廣津留さん提供)
ジュリアードの修了式を終えて(廣津留さん提供)

 「ステージ上でのプレゼンテーションは私が入学した頃から必須条件となったのですが、21世紀の音楽家として演奏のみに限らず必要なスキルを身に着けてほしいという学校側の思惑があるのかもしれません。音楽家も自分をブランディングできなければいけない時代ですから、そうした点でもジュリアードは先駆けだったと思います」

 リサイタルを終え、ついに迎えた修了式。ここで、ある賞の受賞者の発表があった。

「ジュリアードの修了式はリンカーン・センターで行われます。ハーバードの卒業式のような派手さはありませんが音楽院らしさにあふれていて、ジャズミュージシャンのウィントン・マルサリスさんのスピーチもあり、在学生のパフォーマンスもあり、盛りだくさんでした。実は、ジュリアードに最優秀賞の発表があることは当日まで知らなかったんです。式のプログラムに何かのアワードの受賞者発表があると書かれていて、他人事のように思っていたら、突然、名前を呼ばれてステージに上がり、賞を受けることに……。

 賞の名前は“ウィリアム・シューマン・プライズ”で、音楽学部の最優秀賞。ウィリアム・シューマンさんはジュリアードの昔の学長で、作曲家としてだけでなく、音楽ビジネスを牽引したことでも功績のあった方。そうした背景もあるので、私が最優秀賞を受賞できたのは、教授陣が演奏を認めてくださっただけでなく、カルテットのツアーのために自主的にクラウドファンディングを募ったことや、オーケストラのコンサートマスターを務めてリーダーシップをとったことなど、演奏以外の部分も評価してくださったのかなと思います」

(構成/奥田高大)

サプライズだったという、修了式での最優秀賞受賞(廣津留さん提供)
サプライズだったという、修了式での最優秀賞受賞(廣津留さん提供)
廣津留すみれさんのファーストCD「メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲+シャコンヌ」
廣津留すみれさんのファーストCD「メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲+シャコンヌ」
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廣津留すみれ

廣津留すみれ

ひろつる・すみれ/バイオリニスト、国際教養大学特任准教授・成蹊大学客員准教授。1993年、大分市生まれ。2016年にハーバード大学(学士課程)、2018年にジュリアード音楽院(修士課程)を卒業。世界的チェリスト、ヨーヨー・マとの共演のほか、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズの演奏・録音などを担当。情報番組にコメンテーターとして出演も。著書に『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超・独学術」』(KADOKAWA)など。2022年にファーストCD「メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲+シャコンヌ」をリリース。ジュリアード音楽院の教授ジョセフ・リン氏の代演を務めたコンサートのライブ音源を収録している。

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