節度のある純アルコールの摂取量は男性で1日20グラム、女性はその3分の2から2分の1とされる。大竹さんは、飲んだお酒を書くと摂取した純アルコールの量が分かる日記式のアプリを活用し、月に一回くらい、通院して状況を報告している。

 たかがアプリと月1回の通院だけと思うかもしれないが、わが身を顧みてこなかった酒好きには効果を発揮する。

「先生と話したり、アプリを使うことによって自分の姿が初めて見えたんです。純アルコールを日々どれだけ摂取していたのか。また、無意識のうちに、酒を飲むことに勝手な『大義』をつけたり、あらゆる生活習慣に勝手な解釈で酒を介在させていた自分に気が付きました」(大竹さん)

 大竹さんが作りだしていた「大義」や「解釈」は、

▽仕事後は酒を飲んでリセットするものだ
▽飲むなら一杯目はとりあえず生ビール。飲みの本番は2杯目の強い酒から
▽酒を飲むと頭の回転も速くなりアイデアが湧く
▽酒によって人とのコミュニケーションが進む
▽酒を飲むとご飯がよりおいしい

 などである。

「缶ビール(350ml アルコール度数5%)1本で純アルコールが14グラムもあるんですよね。居酒屋に行けば『とりあえず生』などと、一杯目のビールは飲んだうちに入らないと思い込んでいましたが、これだけで相当な量のアルコールを摂取していることがクリニックに行ったことで理解できました。『大義』にしても、実際に減酒を試してみると、お酒はあってもなくてもご飯はおいしいですし、長年の思い込みの数々が間違っていたと気づかされました」

 初めての受診から、飲む量が減ったり仕事のストレスで元に戻りかけたりの「波」は経験したものの、全体的には改善した。ここ最近は月に3日ほど、缶ビールを1缶飲む程度で酒席の誘いも断れるようになったという。

「今後、飲み方がぶれてしまう可能性も否定はできません。減酒は、いきなりうまくいくものではなく、好不調を繰り返しながら良くなっていくのだろうと感じています。だめかなあと思ってもあきらめず、じっくり続けていくことが大事です」と話す大竹さん。今は飲んでいた時間を使い資格試験の勉強をしている。頭も飲んでいた時よりさえているし、何かに取り組もうという意欲がわくようになった。

次のページ
依存症患者と予備軍は300万人いる