同時期に、プライベートでの変化も重なった。子どもが小学校に入り、学年が上がるにつれ少しずつ自分の手を離れていった。

「子どもがかわいくてしょうがなかったんですよ。保育園の送り迎えだったり、子どものためにいろいろなことを頑張ってきたつもりでしたが、やることが減っていく現実がとてもさみしくて……。生活のモチベーションがなくなったような感覚に襲われました」(大竹さん)

 酒量が増え、飲み方が一気におかしくなった。酔っぱらっては財布を無くしたり、転んでけがをしたり…。妻からも飲み方を強くとがめられるようになった。怒られるのが分かっていて酒を飲むのは後ろめたく感じたし、後悔も襲った。だが、やめようと思ってもどうしてもやめられなかった。

 居酒屋に寄ると量を飲んでしまうので、駅から歩いて帰る間の缶ビールだけにしよう、と駅近くのコンビニで2缶買う。だが、その2缶で制御が効かなくなる。途中にある別のコンビニで酒をまた買い足して、結局はたくさん飲んでしまう。

 その後、心療内科を受診し休職を選択した大竹さん。だが飲酒を休むことはできなかった。

 妻と娘が仕事と通学で家を出たあと、朝から家で酒を飲む。昼寝を挟んで再び飲み直すという日々が続いた。妻にばれないようにごみはマンションのごみ捨て場に持って行ったが、飲んだことが分からないはずはなかった。

 すでに会話らしい会話をしなくなっていた妻から切り出されたのは「離婚」の二文字。かわいくてしかたなかった子どもとも、気づけば話をしなくなっていた。

 心療内科で、酒を一切断つようにすすめられた。だが、「断酒は逃げ場がない、無理だ」と感じた大竹さんが別の方法はないかと調べてたどり着いたのが、アルコール依存症専門の心療内科で断酒だけではなく減酒の治療も行っている「さくらの木クリニック秋葉原」だった。同クリニックの倉持穣院長は、「今日から減酒! お酒を減らすと人生がみえてくる」(主婦の友社)などの著作もあるアルコール依存症治療の専門家だ。

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「酒好き」が依存症になる2つのパターン