夏の甲子園大会が盛り上がりを見せているが、高校野球では選手だけではなく、ベンチで采配を振るう監督の表情が話題になることも多い。
【写真】上宮時代の山上烈監督に激怒された元プロ野球選手といえば
かつての箕島・尾藤公監督の“尾藤スマイル”や宇和島東、済美・上甲正典監督の“上甲スマイル”がよく知られるように、選手たちから恐れられた“練習の鬼”も、甲子園のベンチでは、「選手をいかにリラックスさせるか」に心を砕いていた。
確かにベンチで監督が怒声を上げたら、選手は委縮してしまうし、ピンチを前にあたふたしたら、その動揺は確実に選手に伝わってしまう。
“スマイル”以外は、けっして喜怒哀楽を顔に出さず、試合の重要局面においても、ポーカーフェイスに徹するのが監督の心得と言えるが、時には沈着冷静であるべき指揮官も、何かの拍子に感情をあらわにしてしまうこともある。
チームの中心選手の気の抜けたプレーに思わず「バカヤロー!」と怒りを爆発させたのが、上宮時代の山上烈監督だ。
1989年の3回戦、八幡商戦、優勝候補の上宮は毎回の20安打を記録し、15対1と大勝したが、7回に問題のプレーが起きた。
先頭打者・元木大介(元巨人)はカーブにタイミングを狂わされ、バットの先っぽに当たった打球がマウンドと一塁の間にフラフラと上がった。
だが、打球の行方を見失った元木は、打席に立ちつくしたまま一塁に走ろうとしない。
こんなときは得てして皮肉な結果が待っている。投手が捕球に失敗し、ボールはインフィールドに落ちた。元木が打席で呆然としている間に、ボールは一塁に送られ、投ゴロでアウト……。楽勝ムードで気が緩んだと思われても仕方がないプレーだった。
主将の“怠慢プレー”に激怒した山上監督は、元木がベンチに戻ってくるなり、「このバカヤロー!ふざけたプレーをしやがって。必死にやらんのだったら、代えるぞ。それがキャプテンのやることか!」と雷を落とした。
「ボールが後ろへ行ったと思ったんです」と元木が言い訳すると、「バカヤロー!ボールがどこへ飛んだかわからなかったら、全力で走れ!」。確かにその通りである。