18年の1回戦、鳥取城北戦、龍谷大平安は2対2の9回裏2死三塁、2番・安井大貴が左翼線にサヨナラ安打を放ち、春夏の甲子園で通算100勝目を挙げた。中京大中京の131勝に次いで歴代2位の快挙は、くしくも勝利数と同じ第100回大会で実現した。
勝利の瞬間、原田監督は目頭を押さえ、校歌が流れると、両目からとめどない涙が溢れはじめた。
その後、お立ち台に上がった原田監督は、目を真っ赤にし、肩を震わせながら「本当に勝ちたかった。勝ちたかった……」の第一声を発し、男泣きに泣いた。
さらに8回途中まで力投したエース・小寺智也を「そんなに気持ちの強い子ではないんですが……。成長がうれしい」と褒めたところで再び言葉に詰まり、100勝目を楽しみにしながら4月に他界したOB・衣笠祥雄氏について「たぶん『良かったな』と笑っているでしょう」と思いを馳せた瞬間、また涙が止まらなくなった。
怒ったり、喜んだり、泣いたり、ふだんはなかなか目にすることができない監督の喜怒哀楽の表情を垣間見ることができるのも、甲子園の醍醐味かもしれない。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。