東京都在住のCさん(41)は、不妊治療とフルタイムの仕事との両立に悩んだ結果、パートで働く道を選んだ。
「子どもを持ちたいなら、働き方を変えざるを得なかったというのが正直なところです」(Cさん)
コンサルティング企業で、朝から夜遅くまでノンストップで働くハードな仕事。女性管理職も多い職場だが、直属の上司を含めて子どもがいない人ばかり。不妊治療をしていることは、何となく言いづらかったという。
「もしかして上司が、子どもを持ちたかったのに諦めた人だったらどうしようと。子どもがなかなかできない辛さを身にしみて感じている分、相手が年上の女性だと、余計に気を遣ってしまう自分がいます」(Cさん)
残業が当たり前の職場で、定時で帰る人はほとんどいない。Bさんは夜まで診療しているクリニックを選んで通院していたが、治療において大事な時に、仕事でも外せない予定が入っていることが続き、しびれを切らした医師からこう言われた。
「子どもを持てる期間は限られています。今のままでは中途半端な治療になってしまい、なかなか子どもを授かることが難しい。一度、ご夫婦で今後の治療について話し合ってみてください」
気づけばハードな仕事に加え、身体的にも精神的にも負担の大きい治療を並行していく日々に、心底疲れている自分がいた。それでもまだ望みがあるのに、一度始めた治療をここでやめるわけにはいかないと思った。だが今の働き方と治療を並行していくことは、もうこれ以上無理だった。一度仕事から離れる道も考えたが、治療にはまとまったお金がかかる。この時すでに500万円を超える金額を治療に費やしていた。
「だから少しでも治療費の足しになるよう、短時間でも働いた方が良いと判断し、なるべく負担の少ない今のパートの仕事に就きました。私の場合は前職がハードな仕事だったことも大きな理由ですが、不妊治療が進めば進むほど、子どもか仕事か、どちらを優先するかを選ばないといけない。もっと支援する体制が整ってほしいと願うばかりです」(Cさん)
今や、体外受精で産まれる子どもは14人に1人。約5.5組に1組が不妊治療の検査や治療を受けたことがある時代だ。にもかかわらず、職場での理解にはまだまだ高いハードルがある。理解が得られないのは職場だけではない――後編では、家族や友人などの近いし人から理解されない辛さを考える。(松岡かすみ)
【後編を読む】不妊治療に「不自然につくった子どもであんたは幸せ?」実母からのひと言が突き刺さる