写真はイメージ(GettyImages)
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 仕事と不妊治療の両立は、未だ解決の兆しが見えない大きな課題の一つだ。仕事を持ち、働きながら治療を続ける女性にとって、治療期間の終わりが見えず、通院回数のかさむ不妊治療は、大きな負担になってしまう現状がある。

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 4月からの保険適用によって経済的な負担は軽減された傾向があるものの、決して安くはない治療費の捻出を考えると、仕事を辞めたくても続けざるを得ない実態もある。不妊治療の今を探る短期集中連載「不妊治療の孤独」の第3回前編では、仕事と不妊治療の両立に悩んだ3名の女性の実例から紐解いていく。

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「不妊治療? そんなことまでして子どもを持ちたいって、すごいね」

 静岡県在住の会社員Aさん(38)。勤務先の男性上司(50代)に、不妊治療を始めたことを明かすと、耳を疑うような反応が返ってきた。

 不妊治療について上司に話すこと自体、とても勇気のいることだった。言わずに伏せておけるのなら、それに越したことはない。でも、度重なる急な休みの申請に訝しがる上司を前に、「これ以上伏せておくことは難しい」と判断し、仕方なく話したのだ。

 不妊治療中の通院のタイミングや回数は、月経周期や卵子の生育具合などに左右されるため、自分の意思でコントロールすることは難しい。一般的に不妊治療における最初のステップとされるタイミング法でも、排卵日を確認するために通院する必要がある。最初は排卵日近辺と予測される日を指定されて通院するが、その時に卵子が育ってなかったら「1~2日後にまた来てください」となるのだ。

 Aさんはタイミング法を経て、次のステップである人工授精に進んだ。何とか仕事を調整し、やっと休みが取れたかと思えば、「明日も来てください」と指定されることもしばしば。そんな中で5回チャレンジするも妊娠せず、あっという間に体外受精にステップアップした。

 卵が育ちにくいAさんは採卵に苦労することが多かったことから、多いときは週に3回、卵を育てるために排卵誘発剤の注射を打つために通院し、スケジュール上の拘束もさらに増えた。薬の影響から、体調が悪くなる日も増え、身体的な負担も増した。

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上司からは「治療してまで子作り?」と