東京・秋葉原で催されている「高架下」キャンプ(撮影/米倉昭仁)

雨も全然気にならない

 父親と息子の2人で来ているキャンパーもいた。父親に話を聞くと、

「このキャンプ場は妻がネットで見つけました。家は千代田区なので、近いから行ってみようと思いました」

 と、ご近所キャンプを楽しんでいる様子。その足元では息子の小学生が懸命にテントの杭を打っている。

「すごく楽しそうにしているので、来てよかったな、と思いますね。ほかのお客さんも結構いるのでいい雰囲気ですし。あと、雨が降っていても全然気にならない。ちなみに夜、妻が子どもを連れて帰って、ぼくだけ泊ってみようかな、と思っています」(父親)

 缶酎ハイを片手に立派なツインバーナーのコンロでステーキを焼く30代の夫婦にも聞いてみた。

「この肉はとなりのスーパーで買ってきました。店が近くにあるので身軽に来られますね。山に行くのはちょっとハードルが高いと思っていました。こういう本格的なキャンプは初めてです」

 自然から遠く離れたキャンプ場とはいえ、みな、思い思いのキャンプを楽しんでいる様子だった。

キャンプ用品が使い放題

 このキャンプ場ができたきっかけは、高架下の不動産開発などを手がけるジェイアール東日本都市開発の新規事業創出を目的とした社内コンペだった。

 開発企画課の北田綾係長は言う。

「高架下にキャンプ場があれば、家や駅から近い。雨にも濡れない。いいことがたくさんあるんじゃないか、と思って、軽い気持ちでコンペに応募しました」

 北田さんの企画は、2回目の応募で通った。

「今年5月、ゴールデンウィークにJR西荻窪駅近くの高架下でキャンプ場を設けました。そのときは一般の方ではなくJRグループ内の人に声をかけて、参加者を募りました」

 今回は場所を都心の秋葉原に設定し、一般の人を対象とした。

 料金は「宿泊プラン(13時から翌朝10時まで)」が大人3000円、小学生1500円。キャンプ愛好家の心をくすぐるのは、有名ブランド「コールマン」のテントやコンロなど、さまざまなキャンプ用品が追加料金なしで利用できる点だ。使い方はスタッフが丁寧に教えてくれる。新型コロナ対策として寝袋と食器類の持参は必須だが、その他の自分のキャンプギアを持ち込むこともできる。ただし、近隣へのにおいなどの影響を考慮して、たき火や炭を燃やすことは禁止されている。

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