夏は子どもの便秘が増える季節。より注意が必要です ※写真はイメージです (c)GettyImages
夏は子どもの便秘が増える季節。より注意が必要です ※写真はイメージです (c)GettyImages
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 観測史上最も早い梅雨明けとなり、猛烈な暑さが続くこの夏。小児科の友政剛医師は熱中症だけでなく、子どもの便秘の増加を危惧しています。夏は1年の中でもとくに便秘が起こりやすい季節ですが、子どもの便秘は放っておいてはいけない理由があります。とくに1~3歳の小さい子どもは便秘による排便時の肛門の痛みやかん腸が「トラウマ」になりやすく、排便を我慢するようになることで、便秘が急速に慢性化し、重症になりやすいのです。パルこどもクリニック院長で「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」作成委員会委員長でもある友政医師のお話を、前編後編に分けてお届けします。前編では「子どもの便秘の問題点と対処法」を紹介します。

【グラフはこちら】子どもの便秘のピークは1~3歳

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 夏に便秘が起こりやすい理由について、友政医師は次のように話します。

「統計を取っているわけではありませんが、普段の診療での経験から、夏は便秘になるお子さんが多いです。暑いと汗をたくさんかくので、大腸の水分吸収が進み、便が硬くなってしまうのです」

■痛みのトラウマでトイレを我慢するように

 子どもの便秘は小児全体の約15%がなるとみられています。また、発症年齢については調査によって差はあるものの、ピークは1~3歳と考えていいそうです。

便秘の問い合わせ時点での年齢
便秘の問い合わせ時点での年齢

 大人の便秘と違って、ちょっとしたことがきっかけの便秘であっても、1~2週間のうちに急速に「慢性便秘(以降、便秘)」になりやすいことがわかっています。

「その理由は『痛みに対するトラウマ』です。1~3歳の子どもは、便秘や排便のことをよく理解できていません。一方で、痛みに対する恐怖はものすごく強い。『硬い便を出す時に肛門が痛い』、その恐怖で泣き叫ぶ子どももいます。そうすると便をすることが怖くなってしまって、便意があっても肛門をぎゅっと閉めて我慢するようになってしまうのです。これを繰り返すうちに便が直腸にたまり、大きく硬くなる。さらに出しづらくなって、便秘が進行していくわけです」

■重い便秘はおもらしと勘違いされることも

 この我慢を年単位で繰り返すと、「巨大結腸症」になることがあります。これは、便を体の外に出そうとする「大腸の蠕動(ぜんどう)運動」が低下するとともに、腸が大きく膨らみ、そこに大量の便が硬い漬物石のようにたまるもので、学童期に発覚することが多い病態です。

「巨大結腸症になると、硬い便のすき間からやわらかい便が漏れて、下着につくようになります。やわらかい便が出てはいるので、これが重い便秘によるものだと、子どもも親御さんも気づかないことが多い。医療機関では下痢と間違われることもありますし、おもらしだと勘違いされて、『発達に問題があるのでは』と精神科に紹介されたお子さんもいました。何より学校などでからかわれ、自尊心を失ってしまうことが問題です」

 新生児や乳児にも便秘はありますが、排便を我慢することはできないので、このように重症化することはありません。排便の大切さが理解できるようになる5~6歳からは、急激に重症化するケースは少ないこともわかっています。

「だからこそ、1~3歳ごろの便秘には注意する必要があります。排便の時にしょっちゅう力んでいたり、痛くて泣いたり、などといった様子が見られたら、早めに医療機関を受診しましょう」

■子どもの便の状態をチェックして早期に発見を

 便秘の定義は「排便回数が少ない(週に3回未満)」だけでなく、「毎日出てはいるが、出にくい、出してもすっきりしない」状態も含みます。子どもが便を出しにくそうにしている場合は便秘だと考えるほうがいいそうです。

「毎日出ていても、全量の便が出ていなければ便秘です。ウサギのうんちのような小さくて硬い便がコロッと1個出てきただけという場合は要注意で、腸の中にどっさり残っています。1~3歳であれば、親が子どもの便の状況をチェックしやすいですから、肛門が切れて出血などをする前に、気づいてあげてください」

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