絵:チャンス大城
絵:チャンス大城

「はい、もちろん行きます!」

 それは、1989年の秋のことでした。

 午後3時からリハーサルが始まるというので、僕は学校を早退させてもらって阪急電車に飛び乗ると、まっしぐらに心斎橋筋二丁目劇場に向かいました。電話をもらってから本番までの5日間は、もうTのこともいじめのこともどうでもよくなって、ひたすらネタの練習を繰り返しました。

 ドキドキしながら壁じゅうにファンの落書きがしてある劇場の中に入り、リハーサルで段取りをつけてもらうと、ディレクターさんが言いました。

「よっしゃ、本番まで休憩や」

 その時です、なんと舞台袖から松本人志さんが現れたのです。

(ほっ、本物の松本人志や!)

 僕は心の中で叫びました。

 なにしろ夕方4時台の番組で20%近い視聴率を叩き出していたのですから、ダウンタウンさんの人気は本当にすごかったのです。その天才松本人志と、僕はいままさに同じ舞台に立っているのです!

 本番が始まりました。

 会場は女子高生の熱気でムンムンしています。そして、オープニングから25分後、ついに「かかってきなさい!」の時間がやってきました。右にある心臓がバコバコいっています。舞台袖から思い切って飛び出していくと、なんとダウンタウンさんが僕の両脇に立ってくれました。

 浜田さんが言いました。

「お名前は?」
「オッ、オオシロフミアキー、ジュウヨンサイー」

 声が完全に上ずっています。

「どっから来たの?」
「アマガサキシー」
「今日なにしてくれんの?」
「ヒトリコントー」

 緊張のあまり、長いセリフをしゃべることができません。

 僕は仕込んできた四本のネタを、夢中でやりました。

「浣腸ー。あっ、田中や、浣腸したろ。ズボッ。あっ、間違えた、吉田やった。オッヒョッヒョ」

 会場は意外にウケています。

「球打ちー。よっしゃ、ホームラン撃つぞ。おっ、球が来た。(股間を押さえて)コン! オッヒョッヒョ」

 どうにかこうにか4本のネタをやり終えると、浜田さんが僕にマイクを向けてくれました。

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松本さんに強烈な突っ込みを入れられて、うっすら泣きそうに