「どやった?」
「僕、将来、吉本興業に入りたいです」
そう言った瞬間、松本さんが、
「入れるかー」
と言いながら左手で僕の右目をどついたのです。
マイクが「ドン」という鈍い音を拾いました。
たぶん緊張し切っていたのだと思いますが、僕は松本さんに強烈な突っ込みを入れられて、うっすら泣きそうになってしまったのです。会場から女子高生たちの「かわいそう」コールが湧き起こりました。
そのせいかどうかわかりませんが、3組の出し物が全部終わり、浜田さんが、
「さあ、3組の中から優勝を決めましょう」
と言うと、松本さんが、
「フミアキー!」
と言ったのです。
信じられないことですが、なんと僕は『4時ですよ~だ』の「かかってきなさい!」で優勝してしまったのです!
賞品を説明するナレーションが流れている間、浜田さんが「よかったな」と言いながら肩を叩いてくれました。そして僕は優勝賞品として、セガの「マスターシステム」とゲームカセットを3本貰って、意気揚々と帰ってきたのでした。
武庫之荘駅に着いたのは、もう夕方の6時頃でした。駅の改札口を出ると、知らない子らが僕の方を見て、
「あっ、テレビ出てたやつや」
と言っています。
「有名人が指をさされるのって、こんな気持ちやろか」
僕は得意の絶頂にいました。
その2日後には、エキセントリックな不良に優勝賞品を巻き上げられることなど知らなかったです。