また、東京で言えば高尾山、関西なら六甲山や愛宕山のような「人がたくさんいる山」に登り、周囲の人と比較してみるのもおすすめだ。自分と同じくらいの年齢の人にどんどん抜かれていくようなら、「だいぶ身体機能が落ちているな」と自覚できる。齋藤医師は言う。
「心肺機能だけが低下していることはあまりありません。一つ落ちていれば、反射神経や運動機能などほかの機能も全て落ちていると考えたほうがいいでしょう。また基本的な健康チェックとして、市町村や職場の健診は毎年欠かさず受けておくようにしてください」
■坂道や階段で練習を
身体機能が落ちている人やしばらく運動をしていなかった人は、日常的なトレーニングから始めるのが得策だ。毎日あるいは1日おきに近所を2~4キロメートル程度を歩き、歩行ルートには坂道や階段を多めに盛り込む。上り下りの際の自分のひざや足首の状態を注意深く観察しておけば、「下りはひざの痛みが出やすい」といった弱点に気づくことができ、山では下りの時間を多めに取るなど対策につなげられる。
「こうしたトレーニングをした上で、近郊のハイキング、次に低めの里山というように、だんだんと体を慣らしていけば、人里離れた山に行っても非常事態に陥る確率はグッと低くなります」
なお、山に行くようになるとトレーニングをやめてしまう人がいるが、週末の登山だけでは、健康増進のために必要な「継続的な運動」にならない。合間の時期は近所を散歩がてら歩くなど、日常的なトレーニングを組み合わせるのが理想的だ。
■山では早めの行動を心がける
ハイキングや初心者向けの山でも遭難の危険はある。何事もなく帰宅するためにやっておきたい準備や活動中の注意点を齋藤医師に挙げてもらった。
●早出早帰り
不測の事態が起きたときに自力で帰ってこられるかどうかは、時間的な余裕によるところも大きい。人里離れた山でもう救助を呼ぶしかなくなったとき、日が暮れてしまうと翌朝まで救助が来ないことも多い。齋藤医師は言う。