安倍晋三元首相銃撃事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界の癒着が次々と明るみに出ている。そもそも旧統一教会が話題に上ったのは1980年代。印鑑や壺(つぼ)などを高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題となった。そのきっかけとなったのが1986年に「朝日ジャーナル」が始めた霊感商法追及キャンペーンだった。当時、問題視された旧統一教会による霊感商法とは、どのようなものだったのか――。ここでは、朝日ジャーナル1987年1月30日号に掲載された記事を紹介する。
※以下に記載された年齢、所属、肩書きなどは、すべて当時のまま
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1983年、青森県でおどろおどろしい事件が起こった。ある主婦を「亡夫の霊」「水子の霊」が出たと脅した霊感商法の一味が逮捕された。85年、米カリフォルニア州で、日本人の女宣教師が殺された。被害者は名古屋で霊感商法にたずさわっていた。両事件に共通しているのは、統一教会とのかかわりである。同教会はこれまで霊感商法とは関係なしと主張してきた。けれども青森の事件で警察は「犯人の会社は統一教会の思想教育を受けた者の集り」と断定した。恋も知らないまま、22歳で生命を絶たれた女宣教師の遺品のなかには、「天のお父さま」への熱い信仰告白と、文鮮明師夫妻の写真があった。善良な信徒たちを、組織的悪行へ駆り立てている「見えざる手」は、どの神さまの意思で動いているのか。
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全国に巧妙な触手を伸ばす「霊感商法」が捜査当局により補捉され、裁判で解明された事例がある。1984年1月12日、青森地裁弘前支部で3人の被告全員が有罪となった恐喝事件だ。
被告は福島県出身のA(36)、山形県出身のB子(31)、岩手県出身のC(31)。事件は二つの面で注目に値する。一つは手口のひどさだ。目的のために手段を選ばぬ霊感商法の行き着く先を示す。もう一つは、意欲的な捜査陣の手により、背後関係について相当の証拠が集積されたことだ。この商法の裏面にうごめく手が暗示されている。