Aらの行為には多くの仲間が加わっていたが、特に悪質なAら3人が起訴された。83年12月の第1回公判で3人は罪状を認めた。検察側は論告で「本件は組織的な犯行であり、被告人3名の責任も重大だ」と述べた。

 興味深いのは弁護人による弁論の中身である。犯行の動機はAの販売成績をあげたい一念だけでなく、被害者を何とか救ってやろうと考えたからだとし、裏付けとして「被害者から受け取った金を一銭も取らないで、全額グリーンヘルスに納め」た、と述べている。弁護士の意図は別として、通常の委託販売員の行為にしては不自然な感をいなめない。

 判決は、「被告人らはP子の家庭が不幸続きであることを知るや、これを利用して金員を喝取しようと企て……」と、ほぼ起訴状通りの犯罪事実を認定。三被告にそれぞれ懲役2年6月、執行猶予5年を言い渡した。

宗教・壺セールス・韓国・原理
洗われて行く背後

 被告たちの背後関係に関する資料を、確定裁判記録(事件記録)から拾った。おのずと浮かんで来る一つの集団があった。

《宗教とセールス》

 主謀者格とされるAの経歴に関し、Aの父はこう供述した。

 ――急に息子が会社を辞めるといい出したので理由を聞いた。息子は、

「キリスト教みたいな宗教に入ったので、セールスをやらなければならないので仕事を辞めないとだめなんだ」と話した。家族の反対を押し切り81年末に退社し、家には帰って来なくなった。82年秋、健康食品や印鑑を積んだ車で一度立ち寄った。83年正月にも来て「結婚して韓国に行って来た」と話した――

 《クレーム対策委》

 Aらと共謀し先生役をしたB子も実際は販売員である。B子の供述。

 ――私は81年から委託を受けて印鑑や壺の訪問販売をしている。現在は仙台市に住んでいる。Cは、私が山形にいたころ属していた印鑑、壺などの販売会社の社長だった人。私は、山形市内で壺を買うよう勧めたことが恐喝未遂、詐欺になるということで警察の取り調べを受けたことがあるが、処分はされなかった――

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