Cは室内を走り回り、「みな殺しにするぞ。成仏させてくれるのか、くれないのか」とわめきながらP子さんに何度もまとわりついた。押し倒し、殴りかかる。Aがそのたびに引き離す役回りをした。夫もまとわりつかれたが抵抗できなかった。P子さんは気味悪さと恐ろしさで体がふるえた。CはさらにP子さんを抱きかかえて窓のほうへ連れて行き、外へ投げ出す素振りを見せた。部屋は四階。小柄なP子さんは「突き落とされて死ぬのでは、と思った」と述べている。Aがとめに入った。そのくせAは、P子さんらを部屋から解放してやろうという素振りはまったく見せなかった。
「堕胎児の霊が乗り移った」と称する女性ら数人も登場した。赤ん坊のように床に丸まり、少しずつ這ってP子さんに近づいて来る。「寒いよ、寒いよ」、「どうして生んでくれなかったの」などといいながら、P子さんのひざにまでにじり寄って来た――
Aの「とめ役」が、実際は共謀の上だったのは、判決などでも明らかだ。水子のしぐさをした1人、グリーンヘルス社の女性販売員(36)=起訴猶予=は検察官にこう語っている。
「控室に、B子もAもCも出入りしていた。Cは『これから霊を出す』といって控室から出て行き、P子さん夫婦のいる部屋に入って行った。Cの声で『うっうっ』という声や、赤ちゃんや動物の泣き声みたいな声、男の酔ったような怒ったような声がし、また暴れ回っているような物音も聞こえてきた。P子さんと思われる女の『キャー』という叫び声や、逃げ回っているような物音も聞こえました」
――悪霊の場面が終わり、再び2人きりになると、先生はP子さんに「霊が苦しんでいるのがわかったでしょう。財産を全部出しなさい」といった。お盆前に子供に大変なことが起こる、などと脅したあげく、「神様は1200万円でいいといっている。神様はこれ以上は許してくれない」と迫った。
「長時間にわたって、部屋の中で責められ、疲れきっていた」P子さんは、とうとううなずいてしまった。翌日、Aらに銀行へ連れて行かれ、定期預金を解約して1200万円を渡した。なぜかそれから2、3日うちに、Aが頼みもしない「一和高麗人参濃縮液」三ダースを自宅に置いて行った。
P子さんは、8月2日、警察へ届け出た――