一方、警察がAの勤務先である青森市のグリーンヘルス社を捜索した際、事務室から「クレーム対策委員会」という表題のあるメモが発見された。こんな内容である。

「会社 ホーム 委託員の住民票のある所――証拠なし。日頃気をつけておく」「メンパーの教育……東京の問題のように、突然(教育なしに)逮捕されずに済んだこと」「突然の場合……氏名のみ、あとは黙秘」「対警察応対策、法律の勉強」「山形事件 盛岡事件――等、今後、警察との問題交渉に当たる際、揚げ足を取られないように、訓練を要する」「消ヒ者センター渉外」……

 明らかに警察対策、苦情対策の手引だ。「対策委員会」の名称や、何より文面は、極めて広い活動範囲の組織があり、法に触れる危険を自認しており、グリーンヘルスもその末端であることを示唆している。

 《韓国・結婚》

 Aに関してと同様、B子の供述にも「韓国」が登場する。

 ――現在私は韓国人の夫と結婚している。ただ入籍はしたが別居生活で、夫は韓国にいます――

 B子宅を捜索した際の写真撮影報告書に、「洋服タンスの中には衣類が下がっており、すみのほうに、文鮮明の写真1枚があった」との記述がある。文鮮明師とは、韓国で「世界基督教統一神霊協会」(統一教会)を創立した教祖。同協会が展開してきたのが世に知られている原理運動だ。

 《押さえられた原理講論》

 警察官によるA宅の捜索などで、多くの証拠が押さえられた。この中には、奇妙なメモ書きのある封筒=後述=や『原理講論』『原理講義案』の本、雑誌『世界思想』などがあった。A宅捜索時、窓からバックを捨てる証拠隠滅の一幕もあった。『原理講論』は、統一教会の教理解説書、『世界思想』は、やはり統一教会の文鮮明教祖を創始者とする「国際勝共連合」の機関誌である。

「被告は統一教会の信者だ」
断定した捜査報告書

 《被告と統一教会》

 確定裁判記録の中に、「被疑者と統一協会とのつながりについて」と題する、起訴前の83年11月27日付警察捜査報告書がある。抜粋すれば次の通りだ。

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