東海道・山陽・九州新幹線の東京―鹿児島中央間は線路がつながっているが、3線直通列車が1本もなく、貨物新幹線導入の障壁になるかもしれない(撮影/岸田法眼)
東海道・山陽・九州新幹線の東京―鹿児島中央間は線路がつながっているが、3線直通列車が1本もなく、貨物新幹線導入の障壁になるかもしれない(撮影/岸田法眼)
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 国土交通省が発足させた「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間報告で、新幹線による貨物輸送について、明記された。過去にも検討されたことがある「貨物新幹線」構想。実現する可能性はあるのか。また、実現に向けたハードルはどこにあるのか。

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 先の検討会は2022年3月17日から月に1回開催され、JR東日本・東海・西日本・貨物、関係省庁、有識者などを交えて議論されている。7月28日の中間とりまとめで、「新幹線による貨物輸送の拡大に向けた検討の具体化」が明記された。

 なぜ、こうした話が出てきたのか。まずはその背景から考えたい。

■日本の物流輸送は貨物列車とトラックが中心

 現在、日本の物流輸送は貨物列車とトラックが中心である。貨物列車は1つの列車に20両以上(基本的に機関車+貨車)で運転されることがあり、輸送力が高い。だが、JRグループの全路線に乗り入れることはできず、運行エリアが限定されている。また、ドア・ツー・ドア(依頼主のもとへ配送する荷物を取りに行き、送り先まで直接届けること)ができないという難点もある。

 トラックは、縦横無尽に移動できるフットワークのよさがある一方、ドライバーの過酷な労働環境及び、ドライバー不足が深刻化している。また、環境の観点からは、二酸化炭素の排出が課題だ。

 先の検討会の中間報告では、こうした問題に加え、菅義偉前首相が掲げた2050年の「カーボンニュートラル(脱炭素)」実現に向けた対応の必要性などを勘案し、長距離輸送をトラックから貨物列車に移行させることで、物流における諸課題の解決を目指している。

■実現したらどんなメリットがある?

 貨物新幹線が実現したら、日本の物流はどう変わるのか。

 まずは、スピーディーな配送が可能になるだろう。現在、東京から宅配便などを送る際、貨物列車、トラックとも、本州のほとんどの地域は翌日に配達される。だが、「海越え」と称する北海道、四国の一部、九州、沖縄県の一部では翌々日となることが多い。

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