ワサビやショウガ、すりおろしのにんにくは「薬味」である。ただ、例えばカツオの刺し身に添えられる薄くスライスされたにんにくが、つまなのか薬味なのかはグレーゾーンなのだという。つまかケンか、薬味かの分類を細かく気にする必要はなさそうだ。
つまに使う食材に、決まりはない。
香りがいい青シソやネギ、みょうがなどは説明不要の、おなじみのつまだろう。
このシソの小さな若芽が「芽ジソ」と呼ばれ、こちらもつまに利用される。青シソの若芽は「青芽」、赤シソの若芽は赤色の「紫芽(むらめ)」。こちらも香りがよく、刺し身に合わせて色で使い分ける。
緑色の茎のようなものの周囲に、かわいらしい小さな花が複数咲いているつまを見たことはあるだろうか。あれはシソの花穂で、そのまま「花穂ジソ」と名付けられている。主に赤シソの花穂が利用されており、紫色の花が特徴だ。
飾りのようで食べ物には見えない気もするが、こちらも立派な食材。
「軸を持って箸で上から下にしごいて花を外します。花は香りが良いですが、軸の部分はおいしくないので残された方が良いと思います」(今村さん)
濃い紫色の小さな葉っぱは「紅タデ」。赤シソの若芽と見た目が似ている。
「蓼(タデ)食う虫も好き好き」(タデの辛い葉でも好んで食べる虫がいるように、人間の好みも人それぞれの意)のことわざに登場する、あのタデのことである。
ことわざでは何やらまずそうな扱いだが、「ピリッとした辛みがアクセントの、大人のおいしさがあります」と今村さん。食べると確かにその通りの味わいだ。
定番ともいえる、タンポポのような黄色い花は「食用菊」だ。かむとつんとした香りが鼻を抜けていく。実は栄養価も高い。
主に赤色でニワトリのトサカのような形をしたつまは「トサカノリ」という海藻で高級品とされる。弾力があり食感を楽しめる。
「つまは香りが良いもの、辛みや程よい苦みがあって口をさっぱりさせてくれる食材が目立ちます。刺し身に飽きてしまわないように、つまと交互に食べることがおすすめです」(今村さん)