刺し身の「つま」には料理人の思いがつまっている(写真はイメージ)
刺し身の「つま」には料理人の思いがつまっている(写真はイメージ)
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居酒屋などの刺し身に添えられている「つま」について、疑問に思ったことはないだろうか。この変わった素材は何? これって食べられるのか、残した方がいいのか……などなど。そもそも、つまはなぜ存在するのか。食文化に詳しい専門家にイロハを教えてもらった。

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「つまはすべて食べていいものです。『いい』というより、ぜひ食べてください。料理人も、どのつまが、その刺し身と相性がいいかを考えて量も調整しています。お皿を下げるときにきれいに残されていると、逆にさみしいんですよ」

 そう教えてくれたのは食文化に詳しい「辻調理師専門学校」の今村友美さん。

 今村さんによると、刺し身につまを添える慣習は、江戸時代にはあったことが文献で確認できるそうだが、いつから始まったかは分からないのだという。

「昔は魚の鮮度を保つのが大変だったはずです。例えば大根は毒を消す作用があると古くから伝えられてきましたが、つまにはそうした薬効や臭みを消す効果も期待されていたと考えられます。時代が変わった今は、刺し身のおいしさを際立たせるためや、見た目を華やかにするための食材として存在しています」

 古い時代。主をたてる存在なら、つまは「妻」にかけて名前がついたのだろうか。今村さんによると語源は「妻」や「褄(物の端の部分)」など諸説あるものの、定かではないそうだ。

 刺し身に添えられた野菜などをつまと呼ぶことが一般化しているが、正確には「つま」「ケン」「薬味」に分かれるという。

 よく見るのが桂むきした後に細切りされた大根やニンジンだが、あれは「ケン」と呼ぶそう。ただ細く切っているのではない。繊維に沿って縦切りしたものは「縦ケン」。繊維に逆らったものは「横ケン」と言う。

「立てて盛りたい場合は縦ケン。敷く場合は横ケンにします。『すべての料理に通じる』と言われるほど、ケンを作るには包丁を扱う高い技術が必要なため、和食の料理人を目指す人は最初は大変な思いをしながら特訓します」
 

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