これらの事情を鑑みて3-4-2-1を基本とし、守備の局面では5-4-1でセットする形になったと思われる。2トップから1トップに変更することで、相手の2センターバックに対して数が足りなくなるが、そこはある程度持たせてもいいとの判断もあったのだろう。前田大然は相手のアンカー(逆三角形の終盤の底)へのパスルートを消しながらプレーし、序盤はそれが奏功していた。
試合翌日の囲み取材の中で、指揮官は、2日前の練習で選手たちからの意見を聞き、「最適な」形を選択したと明かした。
「3-5-2で戦うと、(スペインの4-3-3に対して)全面マッチアップなんです。相手の戦いに対して全面的にマッチアップしていくところでやっていて、アグレッシブにいくべき部分と、より我々がいい形で守備から攻撃に移っていく部分、リスクを負うところと負わないところ等々を考えた上で、どこが一番、我々が落ち着いて、攻勢になっても守勢になったとしても、試合を主体的にコントロールして戦えるんだろう、ということで変更しました」
結果は周知のとおりだ。後半は推進力のある堂安律、三笘薫を投入し、リスクを負って前に出て鮮やかに逆転を決めた。その後はまた選手を替えながら5-4-1で粘り強く守り、スペイン相手に勝ち点3をつかみ取ってみせた。
■「参考になった」対バルサ戦
日本がスペイン相手に展開した戦いは、昨季のUEFAヨーロッパリーグ準々決勝で鎌田大地が所属するフランクフルトがバルセロナに勝利した形に近い。それは指揮官も「参考になった」と話していた試合だ。ブロックの設定場所はフランクフルトよりも下がり気味だったが、集中した守備から攻撃に転じて勝利をつかんだ点は同じだろう。
さらに付け加えるな2012年、2013年、2015年とJ1を3回制したサンフレッチェ広島時代に採っていたシステムで見せた戦いとも通ずるものがある。森保監督も「形的には広島のときもずっとやっていたので。私の中では整理できるので良かった」と話した。
ドイツ、スペインを撃破してたどり着いたラウンド16の相手は、クロアチアだ(日本時間5日24時)。板倉が累積で出場できないことは痛いが、冨安健洋がスペイン戦の終盤で復帰したのはポジティブな要素だろう。
相手の基本陣形は、スペインと同じ4-3-3だ。森保監督はどんなメンバーを選ぶのか、そしてどんなシステムを用いるのかも、注目される。
(ライター・佐藤 景)