日本を勝利に導いた“ミリ単位”と呼ばれる決定的瞬間。三笘は試合後に「ちょっと足が長くてよかった」と語った(写真/アフロ)
日本を勝利に導いた“ミリ単位”と呼ばれる決定的瞬間。三笘は試合後に「ちょっと足が長くてよかった」と語った(写真/アフロ)

 この形だと、攻撃の局面で本来1トップと共にゴールに迫る役割を担う2シャドーが、守備の局面になった途端に大きな移動を余儀なくされる。一方で攻撃に転じれば、再び前に出ていかなければならない。スペインにボールを持たれる展開の中で、鎌田大地と久保建英はそのハードなタスクをこなし続けた。

 その効果について鎌田は試合後に、こう話している。

「ポジションが僕に関してもタケ(久保)に関してもそうだけど、常に守備に追われて犠牲になるようなシーンが多かったと思います。でも実際、やり方としてはハマっていたと思うし、僕らがたくさん走って守備に追われることになるけれど、フランクフルトでもあれがハマっていた。フランクフルトの方がもう少しプレッシャーも前めで、前の推進力がある選手が多いので、少し違いますけど、でも彼らからしたら、あれだけ引かれるとやりづらかったと思う。1失点はしましたけど、自分たちはいい守備ができたんじゃないかと思います」

 1失点はしたものの、スペインはブロックの前面をなぞるようにパスを回す時間が長く、日本の守備が機能した。それはこの試合の大きな勝因になった。

 仮に試合の2日前にテストした3-5-2だったら、どうか。相手のCBに対して日本の2トップがプレスをかけることが可能となり、アンカーにはトップ下がマークに付くことができる。2人のインサイドハーフに対しては、守田英正と田中碧の2ボランチが対応し、相手の3トップには板倉滉、吉田麻也、谷口彰悟の3バックがそれぞれ対応する。

■森保監督が選んだ最適な形

 ただし、そうなると生じるのが、相手の2人のサイドバックに誰がマークに付くのかという問題だ。日本のウイングバックが前に出て捕まえるのがセオリーになるものの、そのためにはチーム全体がかなりコンパクトな状態である必要がある。つまり最終ラインの設定が高くなければ難しい。出場国中で最もボール保持に長けたスペイン相手にそれが可能かどうか。押し込まれた状態になると、日本のウイングバックは相手のサイドバックをとらえるためにかなり前に出る必要が生じてしまう。そうかといって、その場に留まっていれば、常に前方のスペースを空けたまま、浮いた状態のサイドバックにやすやすとボールを運ばれてしまう。

 また、中盤では1トップ下とボランチの3人で守備ラインを形成することになるため、サイドにボールを展開されると、その都度、大きくスライドして対応しなければならない。4人で68メートルのピッチの横幅を守るのと、3人で守るのとでは当然ながら移動距離が大きく違う。

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