三浦祐輝さん
三浦祐輝さん

 できない息子にいらだち、手をあげるまでになってしまった自分自身にショックを受けた。かつて同じ塾業界で働いていた妻に「そんなになるのだったら、もう中学受験はやめたら?」と言われたこともある。

「塾講師と生徒は、お金を介した関係であるからこそ、たとえイライラすることがあっても手をあげるようなことにはならない。自分の子どもではありませんから。ちょっと“他人ごと”ぐらいがちょうどいい距離感なのかもしれません」

 自分の子どもであるが故に、なんとしても理解させようと、徹底管理しようとしてしまう。相手が生徒であれば「もう一度教えようか?」という柔軟な姿勢になるが、自分の子供の場合は「さっき言ったじゃん!」とイライラに直結してしまう。

「そうした時に“人間の闇”のようなものが出てくるのだな、と感じました」

 夫婦ともに、塾業界で働いていたことから、「中学受験を通して学ぶことは、大人になってからも役立つ」と感じていた。算数で言えば、数字の感覚も身につくうえ、社会人になってからも生きることばかりではないか、という実感があった。息子は記憶力も良かったことから、「この子は中学受験にハマりそうだ」という直感も働き、小学1年から習い事の一つとして通塾していた。

 自身の転勤に伴う転塾も経験したが、小学3年の頃まではずっと母親任せ。父親の自分は、「困ったら勉強を見るよ」というスタンスでいたが、小学4年のある日、息子のノートを見たことから、元塾講師のスイッチが入ってしまった。

「読めないような文字で書かれていましたし、要素も整理されていない。とんでもないノートだな、と。『これはちゃんと関わらなければ』と思うようになりました」

 授業で習った要素はしっかりと理解してほしい。そんな思いから、まずは三浦さんが授業用のノートを作成し、写してもらうことから始めた。そもそもきちんと理解していないから、問題は解けない。そうすると、「なんでわからないんだ!」と悪循環に陥る。だからこそ、最初は「写せばいい」と息子に繰り返し伝えた。

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